大槻ケンヂ 『オーケンののほほん日記』

オーケンののほほん日記 (新潮文庫)

オーケンののほほん日記 (新潮文庫)


『のほほんと熱い国へ行く』に続いて新潮文庫大槻ケンヂを読んだ。これはぴあ誌に連載されていた日記を書籍化したもので、1992年・春〜1995年・秋にかけての記述である。ちょうどバンドブームが終演して、オザケンだのピチカート・ファイブだのが流行り出し、筋肉少女帯もこれからどうなっちゃうんだろうねー?なんていう時期だ。そんな頃のオーケンの日常生活、仕事としてのバンドライフ、没頭していた趣味、日ごろの想い、仲の良かった友達なんかについて、笑いとエロ妄想と涙を交えてダラダラと書き連ねている。デフォルメなしの日記分そのままなので当然文体はライトであるが、内容のほうはこれがなかなか重い部分もあるのだ。


前半はオカルト、UFO、心霊・超常現象etc、当時大槻がハマっていた不可思議な本についてのネタが多い。ノストラダムスの予言の行方も地下鉄サリンもまだ未知の頃だが、彼なりに膨大な量の文献を読み知識を深めていたようだ。ウソだとか本当だとか、正しいとか間違っているというのではなくて、その手の現象の周辺にいる人間たちの様子や言動を楽しむ姿勢で大槻は己の見解をあーだこーだ書いちゃってる。それにしてもハマり方が尋常じゃない。なにをやるにもかなりな凝り性なんだな、やっぱり。


後半は「心の病」について。かなり深刻に悩んでいたようで些細なことで落ち込んじゃっているのだが、意外にもそれを受け入れて前向きに生きようという強い決意と志を持っていたようだ。強くなりたい、格闘技への興味を通じていかにして生き抜くかを彼なりに模索していた時期であった。大槻がこういう前向きさについて述べているのは珍しい。


ほかにもその頃の筋少・ソロ活動の状況や、聴いていた音楽、観た映画、読んでいた本、改名したばかりの町田康と対談したことや、菅野●穂と初めて会った時のことなど、資料としても貴重でファンにとっても重要な内容が盛りだくさんだ。そして続編の『のほほん日記 ソリッド』も続けて読んでみることにするか。