町田康『猫のあしあと』


猫のあしあと

猫のあしあと


上にも書いたとおり、町田康の猫エッセイの第2弾。これを読むと猫中心の私生活を送っているかのように思えるくらい愛猫への密着度・愛着が高く、数もたくさんを飼っているし、それぞれにみなさん個性的なようだ。動物の習性や闘病・回復や死を通して、人間の、町田康という男の姿を、日常を描く技術は今作も秀逸だ。簡潔であっさり読みきれるが、内容はディープで読後感は重い。


町田夫婦必死の看病の末、小さな小さな子猫・エルが奇跡の回復を見せる場面はその秘めた生命力の凄まじさに思わず手に汗握ってしまった。それとは逆にこのシリーズで主役級の扱いだったゲンゾーが予想だにしないあっけない最期に見舞われるラストには、やはりなんともいえない虚無感に包まれた。。。エルが見せた底力とゲンゾーの運命のあっけなさ、もちろんこれらは人間にそのまま置き換えて語ることが可能である。家猫という狭い狭い世界で生きる者も、どれだけ広い舞台で活躍する大人物も、この地球上に生まれちゃったんなら結局おんなじなんだよな。。。もちろん私も、そしてこれを読んでいる貴方もだ。ゲンゾー亡き後の世界が何の遠慮もなく素知らぬ顔で回り続けているという現実は、いいかげんにどうにかならないものか。。。


この猫シリーズ、引き込まれ度合いという点では町田文学の中でも最高峰かもしれないね。途中で止められないもの。


猫にかまけて

猫にかまけて