中島らも『お父さんのバックドロップ』

お父さんのバックドロップ (集英社文庫)

お父さんのバックドロップ (集英社文庫)


映画化されてたのは観そびれたが小説はいつか読んでおこうと思っていたところ、近所のブックオフで文庫をゲット。若林のブックオフはなにげに品揃えがいい。そのうえ安いのでお気に入りだ。もとは学研研究社から出版されていた本で、内容は子供向けだ。悪役レスラーを父親に持つ下田君の家族の物語である表題作ほか3話が収録されている。


全4話、どの作品も簡素ではあるが、小説として非常にレベルが高い。中島らもはやっぱりスゲエぞ。悲劇的でもなければハッピーエンドでもない。ちょっぴり可笑しくてシニカルで、登場人物はみなリアルに不器用だ。それぞれ友情や家族関係・親子愛がテーマとされているが、どれも温かくに愛情に満ちている。人と人との微妙な距離感をうまい具合に把握し、表現し、面白く読ませてくれる。考えていること・見ていることが日頃から尋常じゃなかったのは明らかにわかる。天才というのはこういうことだな。
今までよんだ中島の小説のなかで一番面白いかも〜。