中島らも『しりとりえっせい (講談社文庫)』


しりとりえっせい (講談社文庫)

しりとりえっせい (講談社文庫)


サラリーマンの電車通勤地獄のお供である「夕刊フジ」に連載されていたエッセイを一冊にまとめたもの。タイトルどおり、エッセイ個々の話の題目がシリトリで繋がっている。
いかにも中島らもらしいものだ、雑学の豊富さとそれに対する深い見識がすっきりした文体で飄々と綴られている。あまりに簡潔なために軽い内容な感じがしそうだが、いざ読んでみるとなかなかこの男は日々ヘヴィな事柄をマジメに考えて生きていたことが伝わってくる。彼のようにアナーキーアウトローな人生を歩むにはそれ相応以上の覚悟と知性が必要であることがわかる。
そのうえ、些細なことに対してでも事細かなリサーチをして知識の幅を広げ、それを嫌味なく柔らかく書き表わす手法から生前のらもの読者に対する優しさと愛情が垣間見える。特にオカルトなお話は彼のお得意分野のひとつで、大槻ケンヂが書いたものを読むよりもずっと楽しめるし、勉強になる。この手のプチサブカルなエッセイをここまで上手く書ける人がいそうでいないので、中島らもの死はこういう点から考えても本当に惜しまれる。。。