ケラリーノ・サンドロヴィッチ 『犬は鎖に繋ぐべからず 〜 岸田國士一幕劇コレクション』


犬は鎖につなぐべからず―岸田國士一幕劇コレクション

犬は鎖につなぐべからず―岸田國士一幕劇コレクション


去年の春にナイロン100℃の公演として上演された演劇の戯曲が、今年一月に単行本化されていた。装丁がキレイ、豆千代デザインの鮮やかな和服を身に纏うナイロンの役者陣の姿が脳裏に蘇る、蘇る……。


現代劇というのはここから始まったのだなー。と、素直に思う。シミジミ。岸田國士の作る物語はどれも地味なのだ。その辺にいる取るに足らない人間(私のことだw)たちの、日常の中での心情の細やかな機微を見逃さずに何かで掬い取って表現するかのような技術には、いま演劇に携わる者すべてが影響を受けているであろう。誰もがちょこっと考えたり体験したりするネタの連続には、つい頷いてしまったり、ほくそ笑んだりしてしまう。言葉づかいも日本語の語感と日常会話のテンポが活かされていて魅力に溢れている。ほどよく可笑しくてほどよく悲しくて、なんだか自分に似ているような登場人物が何人もいるし、人を惹き込む力量の高さにはただ感心だ。



そして7本の岸田戯曲を見事にコラージュさせちゃったケラの仕事ぶりも流石。別々のはずの物語がなにげなくニアミスしながら、最後にとんでもない大集合ってなっちゃう展開は上手いよなー。萩原聖人緒川たまきみのすけ植木夏十新谷真弓松永玲子、、、青山円形劇場で好演を見せてくれた役者の力も思い起こさせてくれて、心の奥がほんのりと温かくなった。




観た当時はこんなことを書いていた。
http://d.hatena.ne.jp/yasshiko/20070517/p1