中央公論新社発売『おそれずにたちむかえ テースト・オブ・苦虫5』刊行記念 町田康サイン会(三省堂書店有楽町店1階特設会場)



ついこないだ池袋で行われたと思ったら、また新刊が出たので恒例のサイン会をやってくれることになった町田康先生。読売ウィークリーに連載されているエッセイの第5弾である。こういうふうに作家自身と読者がじかに顔を合わせて触れあう機会を設けてくれることは大変ありがたいことだ。参加者はやはり今回も常連さんが多かったようだ。こないだ見たような顔がチラホラ。
開始時刻の30分ほど前に会場に着くともう30人くらいの行列ができていた。これくらいならすぐに自分の番が回ってきそうな気がした。早く来てみてよかった。予定時刻ちょうどに町田が登場したらしく、サクサクと列が進む。もう何度も経験していることだがけっこうドキドキするものだ。
ハナキン(死語)の有楽町、通りすがりの人々は行列を目にして不思議そうな表情を浮かべていた。何の列かと整列を管理する若い書店員に質問する者多数。繰り返し「町田康さんのサイン会です。」と返答する書店員。答えを聞いた通りすがりの人々はみんなわかったようなわからないような顔をしていたのが面白かった。おそらく名前は聞いたことがあるが詳しくは知らない、という感じだろう。売れっ子芥川賞作家といっても、普段ふつうに仕事をしてテレビを見て酒を呑んで寝るだけの生活を送っているような市民には、彼の知名度はそんな程度だろう。


さーて自分の番が遂にキタ!町田康はやや引き攣ったような顔つきでサインをして、握手をしてくれた。「ありがとうございます」だってよー。自分が町田に対面する時にはなにか特別に面白いことが起こってほしい、というささやかな願望は今回もあっけなく打ち砕かれ、あっさり終了。
サイン会というのはフィクションでもエッセイでもなく、良くも悪くもまぎれもない現実であった。