町田康・いしいしんじ『人生を救え!』


人生を救え! (角川文庫)

人生を救え! (角川文庫)


いつのまにか文庫化されていたので購入。町田康が新聞紙面で読者の悩み相談の回答をしているのがまとめられた前半と、町田といしいしんじが対談しながら都内のいろんなところをぶらぶら散歩する後半とで構成されている。


町田のみの前半は、一般読者の日常的な悩みに真摯に答えているように読めた。小説で登場する主人公のようにもっとおちゃらけているものを想像していたのでちょっと意外だ。彼独自の哲学をもってして、苦しい現実社会でいかに苦難をかわしていくかを教授してくれている。あいかわらず世間を見る目は鋭いし、物事の裏表を常に意識におく様に共感できた。悩みというのはきまって人間関係が根幹にあるという論理にも大いに納得。回答パターンはどれも町田康なもので、作家というのはやっぱりすごいなぁと思った。


二人が浅草だの隅田川沿いだの台場だのをダラダラ歩き回る後半、くだらないものに着目したり、その辺に普通にいる人間を観察したり、こちらも面白い。特に丸の内でサラリーマンを見ながら会社務めに関して語っている部分は面白く読めた。表向きには利潤を追求するのが目的である組織と、その中での人間の立ち位置や役割、付き合い方、つまらないに決まっている労働もこれを読めば力を抜いて容易く勤務できる。東京というところはほんとうにいろんな人がいていろんなモノがあって、その分だけ住みづらかったり辛かったりもするけれど、楽しもうと思えばそのための材料はいくらでも転がっている。誰もがそう思っているだろうが、なかなかこの対談のように実行はできない。
たしかこれの続編も出ていたはずなのでいずれ読んでみることにするか。