本谷有希子『遭難、』


遭難、

遭難、


2006年10月12日〜19日に青山円形劇場で行われた劇団、本谷有希子の第11回公演の戯曲が単行本化された。この作品が第10回鶴屋南北戯曲賞を受賞したのはまだ記憶に新しい。本谷の小説はちょっと日本語として???な部分が目立って読みづらく感じるが、この戯曲に関しては生で公演を2回観ていて、男子生徒が自殺未遂をした学校の職員室が舞台という内容・ストーリーはまだ記憶にはっきり残っていたため、非常に短時間で読むことができた。ところどころに舞台公演時の写真が挿入されていたのもイメージを思い起こすのにかなり役にたった。
自分大好き、とにかく己の都合のいいように立ち回ろうとする里見先生の滑稽で滅茶苦茶なお話だ。セリフだけの文章という形式で改めてこの作品に触れてみたわけだが、特に新たな発見や興味を引くような表現などは見当たらなかった。伏線の張り方や状況の壊し方などはいかにも本谷有希子でなかなか面白いのではあるが、その壊れた状況を最後に上手く収集させることができていないのではなかろうか。散々やらかした後のオチがどうも弱く、尻切れトンボな感触が拭えない。もともと生身の人間を使って表現するために書かれたものなので、これくらいなのかもしれないが本谷有希子であるのならば、もっともっとグッと来るなにかが欲しかったように思う。舞台公演のほうはそれなりに楽しめたので、それで充分だと思わなきゃだめなのかな?


最初のページに仁科(自殺未遂した生徒)の母親のセリフで「一輪分」とあるが、これは「一輪糞」の誤植では?この場面で円形劇場が爆笑に包まれてた記憶があるが、どっちなのだろうか?



劇団、本谷有希子: www.motoyayukiko.com


公演時のキャスト:里見先生(松永玲子ナイロン100℃)、石原先生(吉本菜穂子)、江國先生(つぐみ)
          仁科の母(佐藤真弓:猫のホテル)、不破先生(反田孝幸文学座


http://d.hatena.ne.jp/yasshiko/20061018/p1