『小説トリッパー 2006年9/25号』


小説 TRIPPER (トリッパー) 2006年 9/25号 [雑誌]

小説 TRIPPER (トリッパー) 2006年 9/25号 [雑誌]



これはめちゃくちゃ面白いぞ!なにが面白いかっていうと、中原昌也芥川賞落選記念の特集だ!選考会当日の中原の一日を追った涙と笑いのドキュメントである。受賞を願って盟友・阿部和重(『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞済み)とともに東郷神社靖国神社を参拝し、それから新潮社クラブでドキドキしながら連絡を待ち、落選の報告を受けた後の残念会の模様まで、柳下毅一郎仲俣暁生が余すところなく赤裸々に描いてくれているではないか。
登場人物が豪華すぎる!阿部の他には同じく盟友・青山真治、某メッタ斬りの大森望豊崎由美、ライバル・鹿島田真希、果てには大御所・某島雅彦から蓮實重彦大先生まで作品の内容がどうであれ中原昌也という男の人気は物凄いものだとただ恐れ入ってしまう。


それにしても芥川賞は彼のように前衛的で一癖も二癖もある作家に対していつまで目を背けるつもりなのであろうか。SPAのコラムで中原本人が書いていたように選評の中で候補作の『点滅……』に関してはほとんど何も触れられていないのが私も苛立たしい。選考結果よりも選考理由が不明確過ぎて納得がいかない。もしかしたら選考委員はみな読んでも理解できなかったのかも知れない。それに中原のどこが映画的な手法なのかよく分からない。村上龍のトンズラも謎だ。必要とされているのはどんな作品なのか、新たな道を切り開いていく価値はどこにあるのか、悲しいかなこんなことを考えるきっかけになってしまった。そもそもどうして文学賞の中で芥川賞がメジャーな存在なのかが非常に疑問である。まぁいいや、わかんないやつにはわかんないのであろう。気にしないで楽しみ続けようぜ!この経験が中原昌也の文学性にどのような影響を及ぼすのか、ちょっぴり気にはなるね。





名もなき孤児たちの墓

名もなき孤児たちの墓

「点滅……」、名作なのに。。。