本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」読了


腑抜けども、悲しみの愛を見せろ


オールナイトニッポン(金曜日)のパーソナリティを務め、「劇団、本谷有希子」主宰の本谷有希子、ちょっと前から気になっていたのだが昨年末の「群像」に長編が載っていたのを思い出して読んでみた。


両親を交通事故で亡くした三人兄妹とその長男の妻との普通じゃない人間模様を描いた舞台の小説化。第十八回三島由紀夫賞候補作品。
自分は女優の才能のある特別な人間であると自意識過剰な自惚れ長女、家庭内の問題を漫画化し雑誌に投稿してまで村中に広めてしまう次女など異様なキャラクター設定やストーリー展開はさすが舞台出身者、面白いものがありセンスが感じられた。姉妹の確執や偏愛、家庭内暴力、イタズラ電話、解りやすいネタを器用に操作する能力には好感を持ってしまい、将来が楽しみ。


ただ説明的過ぎて執拗な情景描写や意図がミエミエで目障りにも思える伏線の張り方などはまだまだ若手というか幼稚さが感じられ、途中で読むのを止めてしまおうかと思うほど正直ヘタクソだなと思った。


とりあえず描くことの経験をもっと積めば本谷独自の魅力やセンスを発揮できるであろうから舞台やラジオと並行して小説執筆のほうも頑張ってもらいたい。