町田康「告白」読了

告白

告白


ワケあって、人を殺め、明かりがつくように気づいた…



読了までに大変な時間がかかってしまった。七百頁近い大ボリューム、それに加えて普段全く馴染みのない河内弁を読解するのにかなり手間取った。
「河内十人斬り」をモデルに、幼少期から過度に思弁的な性格を持ち、思考と発言をうまく直結させることが出来ないがために苦悩する主人公・城戸熊太郎の波乱に満ちた生涯を、騙され裏切られながら十人をも惨殺するまでに至る過程を、あいもかわらず個性的な文体で憎しみと愛とユーモアを交えリアルに描いた大作である。


従来の町田作品同様、今回も主人公は労働もせずに博打、飲酒、女遊びに明け暮れるどうしようもないダメ人間だ。しかし今回の城戸熊太郎はただのダメなヤツというわけではなく、ヤクザな行動に自分なりの根拠を持っているのである。深く考え悩みぬいた末に自ら好んでダメ人間と化して、生涯這い出ることの出来ない泥沼へズボズボと嵌まってしまうのである。
暴力を振るわざるを得なくなり、金を騙し取られ、妻に浮気され、悪循環極まりない悲劇的な人生を送り通してしまう…。


追い込まれた末に神様までを登場させて殺人行為を脳内で正当化させていく過程は人間の弱さと脆さが非常にリアルに描かれている。


怖い…。なぜか世間とは折り合いが付かない、どうも解ってもらえない、、、私の人生と全く同じじゃないか…。