「魚上氷 うおこおりにのぼる」(下北沢 LADY JANE)


LIVE:石橋英子(pf)、山本達久(dr)、山崎阿弥 (voice)


バレンタインデイ!下北沢の渋くてオシャレなジャズ・バーで上記3名による即興セッションライブが執り行われた。アップライトのアコースティック・ピアノと最低限のドラムセットが置いてあるだけの狭いところだったけれども、そんなことは問題ない。やけにひっそりとした夜の中、2部構成のライブで、「第一部」は2名ずつによるがセッションが計3パターン。「第二部」は3名全員による即興と石橋英子のソロ曲を、という構成だった。


で、第一部の一番最初が一番の聴きどころだったな。石橋と山本の対決だ。バーの静謐な空気感に見合った集中度の高いパフォーマンスで、石橋の厳かなピアノプレイに耳を奪われた。ヨーロッパっぽいというか、クラシカルというか、モノトーンな感じというか、ECMなテイストの溢れるアドリヴが炸裂し、夜空に星屑を散りばめるようなフレーズの連続にさすがは石橋英子と唸らざるを得なかった。彼女の即興は比較的手癖が現れてこないタイプなので、毎回違った色合いで、毎回別モノとして楽しめるのが良い。素晴らしい。もう何度も一緒に演っていて相性も抜群の山本達久(NATSUMEN)は判断力や適応力の高さを活かして、場面場面で器用にアクセントをつけてくれていた。相手のスタイルを読んで瞬時にこういうカラフルな音を出せるミュージシャンというのはなかなかいない。


順に二人ずつで演奏した後、第二部はまずは3名によるセッションから。山崎阿弥という「声」をいろいろと操るミュージシャンは初めてみるが、なかなか声が綺麗で、かつアイディアも豊富で面白いことをやってくれる人だった。渾然一体のインプロヴィゼーションというのではなくて、それぞれの持ち味やフィーリングを美しく重なり合わせることに重点が置かれたセッションは、夜のひっそりとしたバーで聴くと格別にロマンティックだ…。続いて石橋のソロ曲を数曲(セットリストは以下のとおり。間違ってるかも)。こちらもところどころで即興演奏を取り入れての丁寧な演奏で、プレイは優しげだが各人からは密度の高いエモーションが発せられていたではないか。アンコールもあって演ってるほうも満足げだ。‘バレンタイン・キッス’という曲を全然知らないと言っていた山本の若さにちょっぴり驚愕した。下北沢の夜空は広く高く、とても美しかった。

石橋英子、山本達久、山崎阿弥 ■

・Dizzy Dance
Postcard from Ghost
・嘆きの砂
・Sanctuary
・KOkKA
・アーケイドのクリスマス

〜encore〜
・Gastank