ナスノスペシャル『離場有浮』&『Prequel Oct.1998 - Mar.1999+1』 Wリリースパーティー (高円寺SHOW BOAT)


LIVE:ナスノミツル灰野敬二大友良英石橋英子今堀恒雄


布袋バンドなどで活躍する日本屈指のスーパー・ベーシスト、ナスノミツルが、昨年リリースした2枚のソロアルバムのレコ発ライブを行った。上記のゲストミュージシャンからわかるとおり100%完全即興のガチンコ対決ライブだ。「本当は即興以外はやりたくない。」というナスノの言葉に強い強い説得力を持たせる濃密で不可思議な空間が創出された2時間、それにしてもけっこうたくさん人が入っていた。プログレッシャーっぽいお客さんが多かった。


まず前半はナスノとゲスト一名がサシでセッションする形態でライブはスタート。出演者それぞれプレイヤーとしてのスタイルや特性がハッキリ表現された演奏で、即興といえどもわりと解りやすい。特にあいも変わらず怪しさ満点だった灰野敬二の音楽という枠から完全に飛び出した独自の表現は、一見すると何がなんだか解らないような感じはするが、聴いてみるとすんなり入り込めて、なぜかPOPで普通に楽しむことができた。その佇まいにしても、轟音ギタープレイにしても、フシギな言葉の羅列にしても、とてもエモーショナルで、ある意味ではとてもストレートでピュアであった。石橋英子(このメンバーに混ざっても全く見劣りしないよ)はエレピを弾いてソロアルバムから‘Postcard from Ghost’を披露、型に捉われない自由度の高いプレイを聴かせてくれた今堀恒雄の存在もインパクトが強かった。
そんな個性派と絡み合うのは本日の主役・‘グルーヴマスター’ナスノミツルのBASSで、ピッキングは力強く、フィンガリングは流麗で、音には張りと瑞々しさが備わっていた。漲る力強さと響き渡る低音は聴いていて本当に気持ちが良い。セッション相手の意図や特性を瞬時に見極め、判断した上でのひらめきやフレージングの妙も流石だ。ネームバリューに恥じないこれぞ名演。



後半はもっと大人数でのセッション大会。『離場有浮』の録音メンバー(ナスノ、灰野&石橋)でやったり、今堀と大友が二人でやったり、最後にはもちろん全員で。プレイはどれも刺激や実験性に満ちていて、高円寺まで聴きに来て良かったと素直に思える名場面の連続だ。プレイとは反して穏やかな人柄の滲み出たナスノのMCにも心が和む。「今日のライブは僕にとっての『Dark Side of the Moon』です。あるいはRock'n' Rollです。」と言う時の彼の表情が印象深い。この言葉どおり、本日の感性のままの表現は確かにロックスピリットの溢れる鮮やかなものだった。アンコールもあり、素晴らしく有能なそして雄弁な5名のミュージシャンによる宴は夜9時半頃無事終幕。こういう場がもっとたくさん設けられて知れ渡れば、ロックも活気づくのになぁ。


Prequel Oct.1998 - Mar.1999 + 1 前編 1998年10月〜1999年3月+1

Prequel Oct.1998 - Mar.1999 + 1 前編 1998年10月〜1999年3月+1

離場有浮

離場有浮