M&O plays プロデュース オリガト・プラスティコVOL.4『しとやかな獣』(紀伊國屋ホール)


紀伊國屋ホールなのだ。開場時刻をやや過ぎたころに到着して着席してみるとなんと目の前の座席にナ★ロンの看板女優のマ●ナガさん!マスクをして顔を隠していてもすぐにわかっちゃった。開演までやや時間があったので観察させてもらったのだ。マツ●ガさん!チラシの束から自分が出るヤツを一枚抜き出して、ひっそりと鞄にしまっていましたね。ふふ。『PW』、楽しみですねえ。ふふ。

作:新藤兼人
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチナイロン100℃
出演:浅野和之緒川たまき広岡由里子近藤公園すほうれいこ
    佐藤誓、大河内浩、玉置孝匡(ペンギンプルペイルパイルズ)、山本剛史、吉添文子

ケラリーノ・サンドロヴィッチ広岡由里子がタッグを組んでなかなか渋い演目を上演している「オリガト・プラスティコ」の第4作目。この『しとやかな獣』は、川島雄三が監督を務めて1962(昭和37)年の正月映画として公開されたものとのことだ。今回はそれをKERAが料理する。上記のとおり、厚みのある出演者が名を連ねているので見どころも多そうではないか。
勤務する芸能事務所で横領・脱税を重ねる者たちと、その中の一人・若い男の家族とが絡み合うお話。ナイロンでやった『犬は鎖につなぐべからず』にも通ずる古き良き昭和風情の溢れるロマンティックな肌触りのなかに、一般庶民の狡猾さやどうしようもない汚さを時に滑稽に、時に辛辣に織り交ぜた味わい深い作品だったように思う。KERAのやりたいことはよく伝わってきたし、良い作品だと私はそのまま楽しむことができた。設定や背景は古めでも扱われるテーマは普遍的な問題で、いつの時代のどんな人間にも必ず付きまとうエゴや欲や愛憎がうまく滲み出ていた。
それだけでなく舞台設備や小道具が非常に凝っており、ラジオ放送で当時のコマーシャルを聴かせる演出なんかも見事で、素敵なシーンが目白押し。ヒロインの緒川たまきは本当に舞台栄えする女優だし、すほうれいこのセクシー・シーンもあってお得だった。セリフの言葉遣いだとか微妙な日本語のニュアンスを魅せるセンスもいいし、後半になって何気なく出てきた玉置孝匡が不気味で美味しい役だった。細かい部分を取上げればきりがないほどに、神経が隅々まで行き届いていた。
衝撃も抱腹もないけれど、こういう風に本質を突いてジワジワ染み入る作品こそがKERAならではのものなのだ。


M&O plays・森崎事務所:http://www.morisk.com/plays/shito/index.html