NYLON100℃ 32nd SESSION 15years Anniversary 『シャープさんフラットさん』【ホワイトチーム】(本多劇場)

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:【ホワイトチーム】三宅弘城 松永玲子 村岡希美 廣川三憲 新谷真弓 安澤千草 藤田秀世
               吉増裕士 皆戸麻衣 杉山薫 眼鏡太郎 大倉孝二 佐藤江梨子 清水宏
               六角慎司 河原雅彦


ナゴムづいています。もう小劇場界の大横綱といって差し支えないだろう、ナイロン100℃の本公演を観劇してきた。ケラという名劇作家が個性・実力ともにハイレベルな役者陣を率いているのだから面白くないはずがない。この劇団にはどうしても過剰な期待を抱いてしまう。座席は後ろから2列目だったけれどもそんなに遠いわけではなかったので安心。再開発問題で揺れる下北沢の聖地・本多劇場、、、ドキドキだ…。


人を笑わせることに疲れた劇作家が人里離れたサナトリウムに逃げ出してしまうオハナシ、、、ナイロンメンバーがホワイトチームとブラックチームに分かれてのダブルキャスト二本立て公演!なんてうたっているわりには、けっこう地味?前作の『わが闇』に続いて大きな展開や突拍子もない表現はない。なんというか、ごく普通のシーンが延々と(上演時間は2時間30分強)続き、これで最後にどう落ち着かせるのか観ていてちょっと不安になったりした。印象的な場面や心に突き刺さってくるセリフも、もちろんスリルや興奮もあまりなかった。笑いのシーンはたびたび挿入されてはいるが、どこか時代遅れで寒々しい。しかし、劇場の狭い座席に長時間座っていることは苦痛には感じなかった。



どうなるんだろー?なんかふつー?と思いながらラストまで…。私がこの作品の凄いところが解ったのは、全てを観終わってからだった。言葉ではすごく説明しづらいのだけど、観劇後のこの気分はなんなのだろう?とにかくいままで味わったことのない感情、見たこともないもの・まったく想像できなかったものを見せられた衝撃、、、パーツ毎には全然たいしたことないはずなのに心に圧し掛かってくるものはとてつもなく重くて強大だった。理由は解らない。魂が大きく揺さぶられ、心臓がドキドキした。席を立ってから走ってロビーへパンフレットを買いに行き、気持ちを落ち着かせるために煙草を吸った。今回もやってくれました、ナイロン100℃!私はこういうものが観たかったのだ!!ということを劇場を出てからしみじみと思った。


やっぱり役者の技量は高い。人生への疲労感や社会への嫌悪を器用に背中に滲ませた主演の三宅、幾重もの複雑な心情を抱えた女を演じた松永、この2名の演技は本当に素晴らしかった。廣川にちょっと不器用なオジサンを演らせることは適役なのはもちろんなこと、いままではあまり目立つことのなかった藤田秀世や皆戸麻衣もただの脇役以上の存在感をたっぷりと発揮していた。新谷真弓の姿を久しぶりに見たが、やっぱり可愛いな。


こうなったらブラックチームの方もますます楽しみになってくる。みのすけとか犬山は何をやってくれるのかな!?