第45回夏の文学教室 『「東京」をめぐる物語 part2』− 町田康『中原中也の東京』(よみうりホール)


日本近代文学館主催のこの企画に2年続いて登場の町田康。そういえば去年の今頃は布袋との抗争がメディアで騒がれていた渦中だったっけ。あれからもう一年たったのか。平日昼間の公演にもかかわらず1階席は満席。私はやや空いてる2階席にゆったり座って、じっくりと町田の声に耳を傾けてきた。


定刻にあっさりと町田康が登壇。最初から最後までやる気があるんだかないんだかわからないあのボソボソした口調で、ときおり笑えるネタなんかもまじえて、だらだらと喋っていた。中原中也について公演することとなった経緯やNHKの番組の収録で山口の湯田温泉(中原の故郷)に行った時のエピソードを最初に話していたが、それが思いっきりシュールで客席はみなさんゲラゲラ。口が達者とはいえないが独特の町田流話術が開始5分で炸裂だ。笑いで観客を掴んでからは中原の生涯を順序だてて説明してくれた。山口を離れて京都の中学へ入学することとなったいきさつ、小林秀雄大岡昇平高橋新吉との出会い、それらのことが詩作に及ぼした影響、かなり若いうちから物凄い人たちと交流が深かったようだ。が、学びも働きもせず、ダダイズムに傾倒し、あらゆるものに背を向けて世間にツバを吐き続けたようで、その波乱含みの生き様は町田康本人の人生と大きくリンクする。町田の口から説明されるとなんというか、ひっそりとしているけどなにかが迫って来るような感触があった。中原の残した詩を何編か朗読もしてくれた。言葉づかいがアナーキーで私には意味のよく解らないものもあったが、町田の声でこういうのを聴けるだけでも嬉しい。
1時間という持ち時間は全てを説明するには足りなかったし、町田がどういう視点で中原中也というアーティストを捉えているのかをもっと聞きたかったが、思っていた以上に公演を満喫できたのでヨシとしておこうか。こういうのを聞けるのはこの場以外にありえないので来年も是非!



中原中也Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%8E%9F%E4%B8%AD%E4%B9%9F


日本近代文学館http://www.bungakukan.or.jp/