ハイバイ 『て』 (駅前劇場)

作・演出:岩井秀人

出 演:金子岳憲、永井若葉、岩井秀人(以上 ハイバイ)、能島瑞穂(青年団) 町田水城(はえぎわ)
     平原テツ、吉田亮、高橋周平、折原アキラ、上田遥、猪股俊明、古舘寛治青年団・サンプル)

名作!これはスゴいぞ!岸田賞でもなんでもやっちゃってくれいっ!!


過去の日記をさかのぼって読むと、もうこの劇団は観に行かないかもなんて書いちゃってるが、1月に見た岩井秀人作・演出・出演の『投げられやす〜い石』という作品がメチャクチャに面白かったので行くことにしたのだ。私の嫌いな下北沢、駅南口でチラシ(ゴミとも言う)を撒いてるヤツらを見ると吐き気がするぜ。駅前劇場、いま注目されてる劇団なだけあってもちろん満席だ。私の前の席には美保純がいて、その2つ前にはいのうえひでのりがいた。わーー。



両親と長男、次男、長女、次女そしてお婆ちゃんからなる家族。それに加えて次男の友達。ありふれた人々によるありふれた光景。子供4人はもう成人していると家族はバラバラになりがちだが、そこを脱却するためにしめやかにパーティが執り行われていた。老いてボケ始めていたお婆ちゃんは、結局亡くなってしまう(葬儀のシーンから舞台は始まる)。そんな状況のなかで、登場人物それぞれの心中や行動原理を、岩井独特のちょっとトホホ(だからこそリアルで、胸に迫り共感を呼ぶのだ)な手法で表現した1時間45分の家庭内群像劇だ。


時間軸が前後したり重複したり、説明されていない(というのは後になって解ることだが)部分が大きく残ったりしたままの状態でストーリーは進行する。泣いたりモメたり、ケンカしたり、家族だからこそ理解し合えなかったりうまくいかないことも多い。当然のことながらいい人もいればヤな奴も出てくる。普段はいい人なのが突然ヤな奴に豹変する時さえある。なぜこの人はこういう心理になってこういう発言をしたのか、こういう行動に出たのか。後半になって物語を別方向から多角的に見せられた時、これはヤラレたと思った。。。それぞれが家族を思いやる気持ち、ボケたお婆ちゃんを大切にする想い、それらが強ければ強いほどそこは一歩も譲れないとそれぞれが考える。そんな心情が絡み合い、重なり合い、ぶつかり合い、時には刃を持って戦いあったりする。ふつうの生活の中で輝くきわめてエモーショナルで心に突き刺さる物語、、、もう1回書こう、これはスゴいぞ!



観ている途中でもう心臓が大きく揺さぶられる、私は今すごい名作を観ている最中なのだという気持ちが贅沢過ぎてどうしてよいかわからなくなるほどだった。眼前に迫った死を悟りきったような表情で、家族を見つめる永井若菜の演技は、今年一番の感動を呼んでくれた。23日まで演ってるので是非!!



ハイバイHP:http://hi-bye.net/