快快 佐藤佐吉賞受賞記念ロングラン『ジンジャーに乗って』(王子小劇場)

作:シノダ+北川
演出:篠田千明
監修:北川陽子
出演:天野史朗、篠田千明、大道寺梨乃、中林舞、野上絹代、山崎皓司、池野拓哉
舞台監督:佐藤恵、美術:佐々木文美、照明:森友樹、音響:山峰潤也、衣装:藤谷香子
振付:野上絹代、宣伝美術:天野史朗、写真:加藤和也、制作:山本ゆい
協力:星野大輔、伊藤啓太、石田亮介、(株)ヒロテック、提携:王子小劇場
企画:こーじa.k.a山崎皓司


多摩美大のOB・OGからなるメンバー全員20代の若手劇団。今年4月に名称を「小指値」から「快快(ファイファイ)」へと改名。前作『霊感少女ヒドミ』は客演で初音映莉子が出ていたこともあり観たかったのだが都合がつかず断念。各所で評判がよろしいようなので是非とも今作は観ておかなければと思い、王子(コウメイ党代表のお膝元だけにガッカイ色の濃い街に思えた)へ向かった。


セリフはダラダラした現代的「超」口語調、舞台設備は鉄パイプを高く組み立てた矢倉のようなもの、これだけだとなんだかチェルフィッチュゴキブリコンビナートを足しちゃった作品みたいだが、なかなか新しいことに挑戦してくれていて新鮮で好感度の高い集団だった。いいねえ。ブーーーン。
ストーリーはきわめて平凡で、作品を語るうえで筋はあまり重要な要素ではない。こういうのメタフィクション?飲み会のあった一日のコトから演劇作品しあげていったように見せた、、、1つの物語を最初は一人称(主観?)で、後からは三人称(客観???違うかな?)で、二度読ませるような展開。
中身をいちいち書くとキリがないのでそれはやめておくが、男の子二人が「セグウェイ」という立ち乗り自動二輪車に乗って現れてきて初っ端からビビったぜ。ブーーーン。


うまくまとめられないので以下箇条書き。


・研究熱心で芸が細かい。
・面白いことをどん欲に取り入れようとする。そしてそういう姿勢を魅せる術を心得ている。
・スポーティーな衣装、コンテンポラリーなダンスがシャープで自然で格好いい。
・たいていの小劇団にネットリとこびりついている「ダサさ」を払拭することに見事に成功している。
・演劇固有の閉鎖性から解放され、ゴールデンタイムにTVで放映できそう、知らない友達を連れて一緒に観に行っても恥ずかしくない、いい意味での普遍性と健全さを兼ね備えている。
・チープなエロに逃げない潔さ。
・脱力的な笑いの要素は量・質ともに適度で、売れない関西芸人のような小汚さがなく、きわめてスマート。
・若い人が演っているせいか、余計な重苦しさがなくてリラックスして観ることができた。
・チームワークが良さそう(に見えた)。一人が仕切って作り上げるタイプの劇団とは明らかに違うモノが放たれている。ありそうでなかなか無いぞ。


自分でも何を書いているかわからなるくらいに おっ!と思うようなパーツに溢れていた。作品が立体的で多面的でどの角度からみても必ず違う形に見えるような芸術作品でも観ているような気持ちになった。そしてなによりもこれから大物になりそうな予感が湯気のように沸き上がっていたのが強烈だった。
誰もやってないことに果敢に挑戦して、でも奇特でも奇抜でもなく、スマートでインテリジェントでオシャレで等身大で自然体。今後の活動が面白そうな集団に出会ってしまった。ブーーーーン。アサスパ公演中の中山祐一朗が観にきてた。