『日本語を読む 〜リーディング形式による上演〜』・演目H『城塞』(シアタートラム)

作:安部公房


演出:森新太郎(演劇集団円


出演:内田慈、金内喜久夫文学座)、久世星佳杉山文雄(グリング)、高田恵篤、吉見一豊(演劇集団円


先日のパルコに続いて内田慈のドラマリーディングを聞きに行った。演目は安部公房の戯曲『城塞』、1962(昭和37)年9月に俳優座で上演されたのが最初で、それ以後あまり発表されたことのない作品であるとのことだ。ちなみに初めてここの世田谷区民割引を使ってチケットを購入してみた。窓口の女性も感じがよかったし、この地域は行政がしっかりしているな。ありがたやありがたや。


かなりジメッとしていてドロドロした肌触り(私は江戸川乱歩の小説を思い浮かべた)の戯曲だ。豪邸に住む若夫婦と夫の父親が繰り広げる混沌としたディープなドラマであった。上演時間は約1時間45分、科白も情報量も多く、集中を切らしてしまいそうになるほどに内容ぎっしりだった。父殺しや劇中劇の要素を含ませながら、まだうっすらと戦争の影を引きずっていた当時の日本人が抱えていた苦悩や恐怖を生々しく見せる冷酷な家庭内群像劇、ストーリーは膨らませすぎな感があったが、読み手の表現力のおかげもあってか堪能することはできた。こういう歯ごたえのあるものを見るのも私には必要な、そんな感じがした。
ポツドールの時に続いてなかなかエロい、しかしクリティカルな役柄の内田は今回もしっかり演ってくれていて、その激しくも人間味のあるリーディングは杉山文雄金内喜久夫とうまく絡んでいたと思う。



終演後に演出者によるポストトークがあったのだが、さすがに濃〜くて疲れていたのでそれは諦めた。