ポツドール vol.17 『顔よ』(本多劇場)

作・演出:三浦大輔

出演:米村亮太朗、古澤裕介(ゴキブリコンビナート)、井上幸太郎、脇坂圭一郎、岩瀬亮
    横山宗和、後藤剛範(害獣芝居)、白神美央、内田慈、松村翔子(チェルフィッチュ)
    片倉わき、新田めぐみ、安藤聖


安定したハイレベルな作品で毎回毎回どんよ〜りした気持ちにさせてくれるポツドール。昨年のvol.16公演『激情』に続いて聖地本多劇場での本公演だ。開演前のダンサブルなBGMは、もちろん岡村ちゃんだ♪


一軒家に住む若夫婦と亭主の妹、その隣にある単身者用アパートで暮らす男たち、彼らの恋人。二棟の二階建ての建物(お得意の「4コマ舞台」だ)で巻き起こる、いわゆる「顔面偏差値」の優劣をテーマにした、どうしようもない糞人間どものどうしようもない物語だ。登場人物は男女総勢14名、それぞれ美人だったりイケメンだったり、ブスだったりブサイクだったり皮膚病だったり火傷を負わされたりしている。対人関係において己の欲を満たすためにはルックスが大きな要因となるのは誰もが分かりきっていること。自分の顔について思うこと、他人の顔に対して考えることを、建前と本音を不器用に使い分けながら生きていく様を見るのは滑稽で痛々しいが、三浦らしいかなり確信を突いた描写なのでズキリとくる。
エロやバイオレンスというこの劇団の持つ需要な要素は序盤から炸裂。親から貰った受け入れざるを得ない運命にあがなえず、右往左往するヤツらのやり場のない欲望と怒りと諦めが観ていて辛い辛い…。『恋の渦(vol.15)』の時と同様に、下層階級ブサイクDQNカップルを演じた古澤と白神は、作品に陰鬱さを滲み出させる役割をうまく果たしていた。特に顔に似合わずどことなく乙女チックな役柄を表現し切った白神の演技は上手かったな。彼らとは逆に、美女・内田慈&イケメン・岩瀬亮も、顔が良いからこそ持ち合わせる欲望に惑わされ、運命に翻弄される役を丁寧に演じていた。ここに出演する役者はみんな空気感の作り方や間の取り方が絶妙過ぎる。


笑いの要素は本当に必要最小限程度、ジメッとした肌触りの緊張感はポツドールならではのものだ。さすが三浦大輔。しかし今回はやや冗長(公演時間は約2時間半)だったかな。ストーリーが重苦しいので正直途中疲れてきて中だるみに感じられた。それと今風の若いカップルとその兄の部屋(アパートの2階・「右上のコマ」)の書き込みが弱く、もう一歩踏み込んでもいいかなと思った。まあそんなことを差し置いても他では決して見ることのできない奇妙だけどシャレにならないほどリアルな世界観を楽しめたので今回も素晴らしい作品である。
あ、最大のミドコロ(!?)内田嬢のオ♀ニーシーン、及び彼女と米村のTELエッチシーンはまあまあだったぞ、と書いておこうか(笑)。内田の演技は今回もそつがない。優秀な女優だ。


最後の最後でやっと超イケメンの米村が顔を見せ、なんともトホホなオチ。人間とはずいぶんと身勝手なもので、都合のいいように日々妄想を育むのだ。


終演後、下北沢の街を徘徊したが、他人の顔がやたら気になったし、自分の顔を見られるのがとてつもなく恥ずかしくなった。



醜さの向こう 確かな美(yomiuri online): http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20080402et07.htm