中島らも 『寝ずの番』


寝ずの番 (講談社文庫)

寝ずの番 (講談社文庫)


久しぶりに中島らもの小説を読んだ。上方落語家一派の葬式の話が3つ収録されている。1話目は師匠の、2話目は一番弟子の、3話目は師匠の妻の「葬儀」が舞台である。人が3人死ぬ小説なのに、、、楽しいのだ。落語についての知識、関西人独特のユーモアセンス(そして明るいエロス)、物語の展開のさせ方から登場人物のキャラ造りに至るまで非常に面白く書かれている。5〜6名出てくる弟子落語家たちはみな親しみやすくていいヤツばかりだ。
そのうえ文章の手触りがとても柔らかく、中島の人柄の良さや優しさがそのまま滲み出ているかのようだ。わずか数十分で読み終えてしまえるボリュームの少なさだが、読後感は軽くないしインパクトも強い。ヘタな重い長編を読むよりもなんだか勉強した気になれた。素晴らしい!