中原昌也 『ニートピア2010』


ニートピア2010

ニートピア2010


表紙の絵がいいな。彼の絵にしてはだいぶ普通っぽいが。
中原昌也芥川賞落選から初の単行本を刊行、その名も『ニートピア2010』。各文芸誌の新年号に掲載された作品がはやくもギッシリと掲載されている。


13の短編が並んでいるが、どれも本当にどうしようもない。そこには救いも希望もなく現在も未来も絶望的で、人物の表情は博物館の動物の剥製のように虚無的だ。おまけに中原お得意の書きたくない書きたくないが今回も連発されている。暗さや逃げ場のなさのせいなのか、スラスラと読み進めることはできなかったがなんとか読了した。


「料金メーターによる課金システム」、時折登場するこの言葉が現在の日本での生き難さを象徴している。社会の糞っぷりが「被害者」からの視座で辛辣にグロテスクに描写されている。それは的確でリアルなだけに目を背けたくなるほどに痛々しい。背筋が凍りつくような恐怖の連続である。が、その恐怖は普段我々が生きる社会が内包しているものなのだ。どうせ生きていてもグッタリするようなことの連続だ。


いつからこういう手法を導入したのかわからないが、この本では同じ文章を何度も繰り返し登場させる音楽で言うところのループがたくさん見られる。原稿用紙のマス目を楽に埋めるにはいいやり方かもしれない。


一番最後に掲載されている『放っておけば、やがて未来』は最高。死に対するこんな考察もなんだか素敵に思えた。