毛皮族の社会派ピンキーバイオレンス 『遺骨のトットさん、ドブに落ちる』 〜 初日! (下北沢駅前劇場)

作・演出:江本純子

出演:江本純子、柿丸美智恵、羽鳥名美子、高野ゆらこ、武田裕子、延増静美、平野由紀、高田郁恵
    細井里佳、菊地明香、中林舞(小指値)、金子清


お待ちかね昨年10月の『おこめ』以来の毛皮族の公演、自分にとってはかけがえのない特別な劇団、当然期待も大きいし始まる前からワクワクドキドキだ。さーて、今回はどう楽しませてくれるのやら。


町田マリーのいない毛皮族だ。看板女優たる彼女の存在はいままでとても大きなものだったし、演技者としての実力も小劇場界№1と言い切れるほどの有能ぶりだった。理由は分からないが出演しないとは悲しい………。しかし!この公演はその町田の不在を逆手に取るかのような面白い魅せ方をしてくれた。嬉しかったのは出演者全員平等に出番があったことだ。江本・町田のツートップ体制もよかったけど、いままでチョイ役しか与えられていなかった他の個性溢れるメンバーが舞台で暴れる時間が増大したのは非常に喜ばしい。柿丸は持ち前のキャラを存分に発揮し強いアクを放っていたし、毛皮族初主演(!?)羽鳥名美子は微妙にゆるくてトホホ加減のあるコミカルな演技を見せてくれた。ルックスが正当すぎるくらい美人なぶんだけ変なコトを演ると笑えるのだ。
期待のエロやバイオレンスも初っ端から炸裂!!美女軍団のニプレスダンスはセクシーなことこの上なくヘタなストリップよりもよっぽど勃起度が高い。この点で注目をひいたのはやはり高野ゆらこだ。スタイル抜群、長い髪とボディラインのシルエットが女性らしく美しい。気合十分のダンスも堂々たるもので全身をフルに使って躍動し、目を剥いて客席を睥睨する様はカッコいいしそのうえ色気も満点だ。乱暴な役柄なのに女らしさで魅了しちゃうってのもスゴいかも。
いつもは出番の少なかった飛び道具・武田裕子もナイスなキャラと独特の舌っ足らずな喋り方で暴走しまくりだったし、延増静美と平野由紀もうまく役柄をこなしてくれたように思う。アイドルのように可愛らしい高田郁恵も最近のボケキャラ路線を突っ走っていた。細井、菊地、中村もここまで奇特な集団の空気にしっかり馴染んでいた。


二つの異なる物語が交互に展開して終盤になって一本に交わるというストーリー。筋書きで魅せる劇団ではないが今回は江本純子の脚本はうまく練り上げられていた。途中でテンポダウンする感もあったがそれもしっかり見せ場として機能していたので問題ない。そしてなにより江本がステージに出てくるとキリッと場の雰囲気が引き締まる。存在感が違うのだ。


ということで、愛欲に塗れたOLの世界とまったりした主婦の近所付き合いの場と、どちらも毛皮族の持ち味がキチンと出ていたのでホッとした。大乱闘の後のラストシーンも効果的だった。みなさんやればちゃんとできるんじゃないですか!



千秋楽にもう一回観るのでまた気づいたことを書こうかなと思っている。