IRON MAIDEN 『SOMEWHERE BACK IN TIME WORLD TOUR 08 JAPAN』(パシフィコ横浜 国立大ホール)
きました!俺たちのアイアン・メイデンのワールドツアー、日本公演初日は横浜!1年半前に来日したばかりと思ってたらまたも日本に来てくれた。今回のツアーは初期〜7枚目のアルバム『Seventh Son of Seventh Son』までの作品の曲を中心にしたセットリストでLIVEを行うということで、新作発表に伴うツアーとは別な意味の期待が大きい。名盤にちなんだツアータイトルもニクい。キャパ5000人のパシフィコ横浜国立大ホール、前売りチケットはSOLD OUT。往年の名曲が聴けるとなると売れ行きも違う。
オープニングアクトのローレン・ハリスの演奏が終わるとあっさりセットチェンジが終わり客電が落ちた。英国らしい湿り気のある叙情的なメロディのイントロ、、、UFOの‘Doctor Doctor’が流れる。。。この時点でもう客席はかなりヒートアップしていてしばらくのあいだ誰も聴くことのできなかったあの曲を体感する準備が万端であることが解かる。イギリスの国民的英雄ウィンストン・チャーチル元首相の戦意を高揚させるようなスピーチ( We'll Never Surrender!! )に続いてきたのは夢にまで見た‘ACES HIGH’。日本のメタル・ファンの全てが待ち望んでいた瞬間である。トリプルギター編成用にアレンジし直されていたせいか少々リフに迫力に欠けていたような気もしたが、Bruce Dickinsonの非の打ちどころのないハイトーン・ボーカルとNikco MacBrainの軽快なドラミングのおかげで期待に見合った感激を得ることができた。歌もアレンジも興奮度もライブアルバム『Live After Death』のテイクを凌駕している。
その後も‘2 Minutes to Midnight’、‘The Trooper’、‘Can I Play With Madness?’、いわゆるこのバンドの中期に当たる80年代中盤から後半の代表曲をたて続けに聴かせてくれた。HEAVY METALにしてはややポップすぎる感はあるが名曲なのでヨシだ。3本が緻密に絡み合うギターアレンジと高すぎる能力を存分に発揮したBruceの歌唱は本当に素晴らしい。どの曲も刺激的でドラマチックだ。発表された当時は賛否両論の渦が巻いたという‘Can I Play With Madness?’もすっかりMAIDENスタンダードとしてライブには欠かせない曲になった。そしてMAIDENファンでこの曲を否定する者はいつの間にかいなくなった。
「‘ACES HIGH’を演ること」とは別にもうひとつの今公演の見どころ、起承転結が何度も押し寄せる13分を超える超大曲、‘Rime of the Ancient Mariner’が中盤に披露された。視界360℃に果てしなく広がる大海が目に浮かぶ……。静かなパートから徐々に盛り上がってゆくところがスリリングでMAIDENらしい。リフも強力だしやたらと歌い上げるBruceも見事。事前に一般公募されていた数十名の「コーラス隊」がステージに登場したのはもちろん‘Heaven Can Wait’だ。「Woo wo! Woooo Woo〜oo Woo Wo!!」、STEVE HARRISを取り囲むようにして熱唱する彼らの姿を見るとなんだか同じ意志を持った昔からの仲間が奮闘しているようで感慨が胸に込み上げてきた。なんだか喉が渇いてきてビールをたて続けに飲みたくなったよ。
それから‘Run to the Hills’を挟んで9枚目のアルバムからタイトルチューン‘Fear of the Dark’。ツアーの趣旨からはやや外れた曲ではあるが、今の大作路線のIRON MAIDENを形づくった重要な曲だし、何度聴いても最高に魅力的な曲なのでここで演ってくれたのは嬉しい。Janick Gersの流れるようなギターソロが大変美しい。いちばんジーンときたのはココかも。そして本編の締めは‘IRON MAIDEN’。今日はどんなEDDIEが登場するのかと思いきや『Somewhere in Time』のアルバムジャケットと同じレーザー銃を手にした身長3メートルはあろう巨大なサイボーグ・エディが出てきた。なんとなくコミカルだけれども大きな大きな体はステージ栄えするし、ツアータイトルともマッチしていてこの感動の時を総括するに相応しい姿であった。おととし見た軍人エディも良かったけど今日のはバンドの長い歴史を感じさせるものがあってより存在感が濃厚であった。これを見るとIRON MAIDENのライブなのだという気持ちがさらに胸に染み渡ってくる。
アンコールは今回のライブでぜひ聴きたかった曲のうちのひとつ‘Moonchild’で始まった。Adrian Smithの奏でるギターシンセのフレーズが印象的、かつBruceの歌唱も迫力と知性に溢れていて埋もれたままにさせてはもったいない超名曲であることを再認識できた。Paul Diannoの後任として81年に加入した彼だが、ボーカリストとしても最強HEAVY METALバンドのフロントマンとしても今が旬だと断言できるほどに絶好調だ。同じく7作目からの‘The Clairvoyant’ときて、ラストは‘Hallowed Be Thy Name’。死刑囚の最期の日を歌ったこの曲は、独白するように歌われた導入部から霧のように濃密な空気が会場を満たす。その後のシャウトと高貴な雰囲気のリフが聴く者を涙に誘う。間奏でオーディエンスを煽るBruce、黙々とBASSを弾くSTEVE、丁寧にフレーズを刻む3名のギタリスト、、、、、英国紳士らしい気品と、ベテラン然とした風格と、長いキャリアで培ってきた孤高さと、音楽に対する熱意と、信念を曲げない高いプライドと、本当の意味でこれら全てを兼ね備えたバンドの絶頂期をリアルタイムで体験できるというのはなんという幸せだろうか。メンバーはみな50歳を過ぎ、あと何枚アルバムをリリースしあと何回ワールドツアーを開催するのかはわからないが、これからもまだまだシーンの核を担っていくのは間違いない。そして近い将来再び日本国内で彼らの音楽を耳にすることのできる機会が設けられた時はきっと別の感動を味わうことができるであろう。IRON MAIDENにはそんな力があり、私はその力を必要としている。彼らのライブは一本一本が貴重だ。こんな凄いものを見せられてしまってはもう言葉もない。
■ IRON MAIDEN ■
OPENING SE : Doctor Doctor
1、Churchill's Speech〜 Aces High 2、2 Minutes to Midnight 3、Revelations 4、The Trooper
5、Wasted Years 6、The Number of the Beast 7、Can I Play With Madness? 8、Rime of the Ancient Mariner
9、Powerslave 10、Heaven Can Wait 11、Run to the Hills 12、Fear of the Dark 13、Iron Maiden〜encore〜
14、Moonchild 15、The Clairvoyant 16、Hallowed Be Thy Name
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