矢野沙織 『Little Tiny』


Little Tiny

Little Tiny


日本が誇るアジアン・ビューティー、21歳になったアルトサックス奏者・矢野沙織の通産7枚目のアルバム。海外ミュージシャンをバックに、2007年の9月にニューヨークで録音されている。
バップに対する強い強いこだわり、彼女の作品の一番の聴きドコロはこのアルバムでもこれに尽きる。かなり若い頃から人前で伝統的なJAZZを演奏し続けてきて、その成果がここにきて大きく花開いたといえる素晴らしいデキだ。フレージングは快活で音は独特の艶にさらに磨きがかかり、早くも演奏家としてのピークを迎えたかと聴く者を不安に陥れるほどの輝きが溢れている。ノリの良い曲でもバラードでもブルーズでも、先人のやってきたことの焼き直しではなくて、己が咀嚼して消化して苦労の果てにやっと生み出されたようなある種の円熟味も感じられるようになってきた。ついにここまで来てしまったか。
そのうえオリジナル曲もよく練り上げられているし、もちろんテクニック的にも問題は無い。参加ミュージシャンそれぞれも面白いプレイで楽しませてくれている。BONUS TRACK含めて全10曲、荒井由実のカヴァーを演ったりアイリッシュ・フォークを取り入れたりと、幅広いタイプの楽曲が並んでいるのできっと聴き飽きないだろう。聴く前はそんなのいらないよと思った美空ひばりとのコラボレーションもどういうわけかとても自然だ。


こんな若くしてここまでやっちゃって、この娘はこれからどこへ行っちゃうんだろう。これでセールス面でも成功すれば、もう言うことなしのミュージシャンになっちゃうな。


PERSONNEL:矢野沙織(Alto Sax)、Doctor Lonnie Smith(Hammond Organ)、Peter Bernstein(Guitar)、Lewis Nash(Druns)



88点。