チック・コリア&上原ひろみ 『デュエット』


デュエット(初回限定盤)(DVD付)

デュエット(初回限定盤)(DVD付)


昨年の9月24日〜26日にブルーノート東京で行われたChick Corea上原ひろみのピアノ2本のみによるセッションが2枚組CD(初回版はさらにDVD付き)という形で音源化された。その名も『Duet』。当時私はこの公演を聴きに行こうかどうか迷ったあげくに結局見送ったわけだが、結果的にその判断は大失敗だったことがこのライブアルバムのリリースにより判明した。


『デュエット』、、、タイトルが全てを物語っている。両者が白熱するバトルを繰り広げるのではなく、あたかも合唱するかのように両者が心底同意し共感し、心をひとつにして演奏しているのが最初から最後までサウンドに現れている。親子以上に歳の離れた二人がいたわり合うような支え合うような、音に描かれた微笑ましくなるほどの仲の良さには心が洗われるような気分になる。
かといってプレイがヌルいわけでは決してない。「ちょっと前までの上原ひろみ」と書けばよいのだろうか、ピアノのみでどこまでやれるか、魂とテクニックとピアノへの愛情をフルに活用して可能性を極限まで突き詰めるように情熱を込めて演奏されている。そんな上原が持っている力以上のなにかを引き出させるように、Chickは長年の経験と天性のひらめきでサポートし、時には引っ張ったり煽ったりしてその極限の高みへと導いている。


スタンダード曲もChickの曲も上原のオリジナル曲も、分け隔てられることなくそれぞれ120%に熱演されていて、熱心に耳を傾けている客席が盛り上がってゆく雰囲気もうまい具合に盤に収められている。サントラ盤でしか聴くことができなかった‘Place To Be’、意表を突くThe Beatlesのカヴァー‘Fool on the Hill’、Chick Corea最強の名曲‘Spain’、優美さを出すことを念頭に置かれたような選曲の優れっぷりにも感服だ。もちろん‘Deja vu’や‘Old Castle, By The River, In The Middle Of A Forest’もChickの力が加わってますますスゴいことになっている。こんな快作はめったに聴けないでしょう。近年稀に見る(聴く?)神アルバム。
付録DVDでChickが客を煽る様はミモノ。なのでケチらずにDVD付きを買いましょう。



97点。



Light As a Feather

Light As a Feather