ジェットラグプロデュース 『投げられやす〜い石』(新宿ゴールデン街劇場)

作・演出 : 岩井秀人(ハイバイ)

出演 : 山中隆次郎(スロウライダー)、内田慈、中川智明、岩井秀人(ハイバイ)


面白そうな出演陣、いま注目の演出家・岩井秀人、ということで観に行かない理由はない。なんてったって内田慈も出るんだから。最近できたらしい歌舞伎町のゴールデン街劇場は客席の傾斜がほどよくあって、どの席でも観やすい。土曜日のマチネ、チケットの整理番号は「1」、ほぼ満席であった。


狭い狭い会場での1時間15分のこじんまりとした芝居だった。岩井が普段ハイバイで演ってることと変わりはない。派手なことや突拍子もないことはないが、なにか心の奥をくすぐってくるようなストーリー・演出である。あくまで凡人の日常を淡々と演じる4名の演技が作風にマッチしていた。天才芸術家「佐藤くん(岩井)」が病気の果てに墜ちていく様と、彼の友人・元恋人との交流は、笑えない、安易に泣けない、別に驚けない、もちろん喜べない、でもそこに表現される何かがしっかりと観ている側に訴えられていた。
役者が少数精鋭な分だけハイバイの公演よりも面白かったぞ。『ヒッキー・カンクーントルネード(ハイバイ)』の再演以来、岩井の演技を見るのは二度目だが、俳優としてもいい味を出していた。こういう物語を書く彼だからこそ今後も進んで出演してもらいたい。小劇場界きっての実力派女優・内田慈の演技も秀一。ちょっぴり悩める複雑な乙女心がうまい具合に出ていた。やっぱり可愛いよなぁ。


うーん。観劇後のなんとも言えない気持ちがまだ胸の中で疼く感じがする。元恋人の死を前にしてカラオケボックスで歌い続ける内田の姿には、言葉では言い表すことのできない寂しさに近いものを感じさせられた。
こういう手ごたえがたまにあるのでやっぱり観劇はやめられない。内田と岩井のコンビはさすが!


これは無理してでももう1回観るべきだったなぁ。