矢野沙織 Concert Tour 2008 -Little Tiny- (青山円形劇場)


ライブも多ければアルバムリリースのスパンも短い、積極的に活動を続ける矢野沙織のライブは昨年の夏に品川ステラボールで見て以来になる。ちょっと前まで子供だったと思ったらもう21歳か。昨年11月にリリースされた7thアルバム『Little Tiny』に伴う全国ツアー、東京はなんと青山円形劇場。なんとも言えないハコを選んだものだ。。。前回のライブはけっこう眠かったりもしたが、今回はどうなることやら。


ベースレスで、ハモンドオルガンとギターとドラムを従えるという一風変わった布陣での演奏であった。デビュー当時から一貫して拘ってきた伝統的バップ・イディオムに則る、良くも悪くも古臭いJAZZである。セットリストは新譜からが大半、オリジナル曲とスタンダードを交互に交え、女性らしい艶のある音色と物怖じしない強心臓を武器にアンコール込みで約1時間半のパフォーマンスだった。
しかしこの人はエンジンがかかるのにいつも時間がかかる悪習がある。前半はどこかしらたどたどしくアンサンブルもバラバラな感があった。おまけに音楽専用の会場でないことがどうも気に入らず、音をスムーズに受け入れるのに私も少々時間が掛かってしまった。が、中盤からハモンドオルガン(生で聴くのは実は生まれて初めて)と矢野のアルト・サックスが綺麗に溶け合ってきて、オッと思わせる部分が徐々に現れてきた。指の動きも軽やかで楽器が気持ち良さそうに歌っているのが伝わってくるようになってきた。
ハイライトはアルバムのレコーディング時のエピソードの話に続いた、Charlie Parkerのカヴァー曲、‘K.C.Blues’。黒人独特のスロウでディープなブルーズを、この若娘は感情たっぷり、聴く者を引かせるほどの表現力で見事に演奏してくれた。大人になったんだなぁ。。。それからラストまで目の覚めるような爽快なプレイを続けて会場を盛り上げてくれた。


これまで5〜6回ほど彼女のライブを見ているが、もちろん今日がナンバーワン。女の子だとか若いとか関係なく、こういう音を聴かせてくれるのであれば日本を代表する有能なジャズメンということでOKでしょう。たしかなたしかな成長を感じ取ることができた、聴いててほんのり嬉しくなるいいライブだったぞ。



Little Tiny

Little Tiny