シベリア少女鉄道 vol.18 『俺たちに他意はない』(赤坂RED/THEATER)

作・演出:土屋亮一
出演: 前畑陽平 篠塚茜 横溝茂雄 加藤雅人(ラブリーヨーヨー) 吉原朱美 
     豊田浩文 菊池敦美


前作『永遠かもしれない』に続いてシベリア少女鉄道を観るのはこれで2回目。誰も思いつかないような手法で思いっきり笑わせてくれるので、土屋亮一の演出は好きだ。少々前にやっていたNTT西日本のHPでのWEBドラマ『あそむび』も彼の作・演出だったが、非常に見応えのある作品だった。きっと今回もハズれないだろうという根拠のない予感を抱いて出来たばかりでピカピカの劇場・赤坂RED/THEATERに行ってきた。


物語の舞台は喫茶店、女店員が一名と、待ち合わせのための利用客が7名いた。豪雨のせいで停電、電車もストップという状況で、7名の客はそれぞれ相手が辿り着かないコトに焦り始める。そんな中、店に謎のホームレスが現れ、なんとその現れた瞬間に息をひきとってしまった。。。


前作とは違って前半の1時間は状況説明&ネタ振り、ラストの30分間が大爆笑スパークタイムという構成。これがいつものシベリア少女鉄道のやり方らしい。
どこで急に笑わせてくれるのか予想できなかったので最初からできる限りの集中力を駆使して観ることにした。役者陣と観客が一緒になってひとつずつ謎を解いていくような前半部、多少の分かりにくさはあったものの出演者それぞれの力でうまいこと魅せてくれた。客演陣が非常に器用でこの7名が同じ劇団でずっと演ってきているかと思うほどに溶け込んでいた。看板女優・篠塚茜と前作から引続き客演の吉原朱美の存在は一言一言に小演劇らしい愛嬌があって観る者を和ませる。ストーリーはシリアスでも登場人物はみな人間臭くて憎めなくて、舞台上の雰囲気はどこかノンキな感じがする。この劇団の作品の空気が好きだ。



開演から一時間経過したところで舞台は急に暗転、明転後はいかにも土屋らしい怒涛の笑いのとり方で、クライマックスのインパクトは強大だった。役者がセリフの書いてあるスケッチブックを手にして、それを客に見せながら演技するという演劇としては起きて破りな手法は面白かったからOKなのだ。しかもそのセリフは物語の謎を解き明かしていくと同時に、ステージ上方に映し出されたトンデモなコメントにも答えているというダブルミーニングなのである。タイトルの『〜他意はない』というのはウソかまことか、でも結果として面白かったんだからそんなことはどーでもいい。何でも許してあげたくなってしまうほどに面白かったのだ。WEB上でいろいろ調べてみたら今作はあまり評判がよろしくなかったようだが、私にとっては他の小劇団を蹴り散らかしてしまうほど爽快で楽しめる作品であった。やっぱり土屋のアイディアは只者じゃない。なにげに篠塚という名女優をしっかり育て上げているという点も賞賛に値すると思う。