ペンギンプルペイルパイルズ#12『ゆらめき』(吉祥寺シアター)

作・演出:倉持裕

出演:小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、内田慈、近藤智行吉川純広
    坂井真紀、戸田昌宏

音楽:SAKEROCK


比較的短いスパンで公演を重ねてくれる個性派集団・ペンギンプルペイルパイルズ、今回は坂井真紀や戸田昌宏を客演に迎えて吉祥寺シアターへ初進出。またまた頭が捩れちゃうようなとっつき難い作品なのかな?はたして私はついていけるのだろうか?



倉持裕の独特の感覚と表現方法からしてどちらかというとマニア対象のひっそりめな作風のイメージがあるこの劇団だが、なんと今回は最初っから最後まで突き抜けるようにあっけらかんとしたドタバタホームドラマであった。これは意外、意外。序盤は笑いの応酬。玉置孝匡ぼくもとさきこのカラミがイイ!「笑い」といっても、やっぱりPPPP的なヒネクレ感を匂わすモノがストーリーにも演技にも溢れていた。
人間間・夫婦間の距離、個人個人の考え方の受け入れられ具合・相容れない様、倉持の視点はやはり鋭くなんと説明すべきか非常に難しいが、客に(物語世界にのめり込ませるのではなくて)意図的に舞台を俯瞰させてその模様をみせる、考えさせる、意を問うような表現には、本当に個性を感じるし巧緻っぷりは尋常ではないと思った。それについていける役者陣もそれぞれみんな凄い。上記の玉置・ぼくもとだけでなく、上品そうでも性格に一癖ある男を演じた小林高鹿、冷たい怒りを内包した女を演じた内田慈、どう見てもまとまらないバラバラな人たちの役割をそれぞれがしっかり果たしてくれて素晴らしかったと思う。
そんなバラバラなヤツらは結局新たな何かを得たり解決させたりすることなく物語は終わりを迎える。バッドエンドではないけれど、ハッピーエンドでもない。みんなそれなりにワガママだったり冷酷だったり腹黒かったり、それが普通の人間だよね?激しい感情の起伏を丁寧に演技した内田慈は今回も輝いていた。
イマイチ入り込めないように出来てるせいなのか、笑えて面白かったけど不敵な後味の悪さも残る。。。こういうのがまさにPPPPの醍醐味だ。



神奈川県的なエピソードの挿入や、ラストの小林のやけくそなハジケっぷりもニクい。坂井真紀の演技も勿論良かった。