イキウメ『散歩する侵略者』(青山円形劇場)

作・演出:前川知大
出演:岩本幸子、浜田信也、盛隆二、國重直也、宇井タカシ、安井順平、瀧川英次
    内田慈、日下部そう、町田晶子

前作『狂想のユニオン』以来、2度目の観劇となるイキウメ。ホントはもう観に行かないつもりだったけれども内田慈が出演するということで急遽予定を変更。ケラリーノ・サンドロヴィッチがブログで‘いま観ておかなければならない劇団’と述べていたが、どうだろう??

とある地方都市に3名の宇宙人のようなモノが舞い降りてきて、人々を侵食し、そこから様々な「概念」を奪い取っていき、街を混乱に陥れるという今作もSFタッチな内容。終始ジメッとした雰囲気が劇場内を覆い、無機質で体温の低い演出でジワジワ攻めていく感じだ。ストーリーは非常によく練られていてまるで瀬名秀明みたいなサイコ小説のようである、とおもったら現在ダ・ヴィンチ誌にこれの小説版が連載されているらしい。まさにページをひとつひとつ捲るように謎が散りばめられ、時間が経つごとにそれぞれが紐解かれてゆく・・・。役者陣の演技も標準以上のレベルを発揮していて主演の岩本幸子・安井順平と、イヤ〜な感じの侵略者の日下部そうは特に良かった。いかにもな説明的シーンが多かったり多少間延びしている感もあったが巧い場面展開とストーリー重視の姿勢には深く頷けるものがある良作であった。
雰囲気が一転するラスト15分がこの作品最大の肝だ。冷ややかだった場が夫婦の別れの場面で突如物語がヒューマニスティックなラブ・ロマンスへと一気になだれ込む。狼狽する岩本の迫真の演技は本当に素晴らしく、胸にグッと迫ってくるものがあった。


筋でグイグイ引っ張って行くぶんだけどちらかといえば演劇色の薄めな作品で、私の好みからはちょっと遠い気もするのだが、広い意味でのエンターテインメントと捉えれば楽しめる舞台だったのでこれだけやってくれればいうことナシ。期待の内田慈はちょっと出番が少なくて残念かな。