村上春樹『やがて哀しき外国語』


やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)


去年一年を村上春樹読み返し年に指定した自分だったが半分も読めなかったので今年も引き続き、、、
ってもう8月かーー。




で、このエッセイ集は春樹が米国・プリンストンに在住していた時に心の中のよしなしごとを書き綴ったものである。日本を離れて大学の客員教師としての勤めをしていくなかで色々と思うことがあったのだろう、いつもクールな彼にしてはなかなか熱い感じで書かれているように思える。
祖国を離れたからこそ見えるもの、離れたところで見えないものは見えないと認識したもの、章が進むにしたがって思いのたけをおもいっきりぶちまけてくれている。それはあくまでも公平な視野から捉えられたもので、日本とアメリカとどっちがいいということではなく、ここはきわめて村上春樹らしく、論じられるのは結局そのなかで生きる個人である。
まえがきが書かれたのが1993年の12月、まだオウムの地下鉄サリン事件阪神大震災も起こっていない頃だ。春樹が社会とコミットするちょっと前に考えていたコトの一部が具体的にわかりやすく書かれているという点でもこのエッセイ集の存在はありがたい。装丁もほのぼのしてていいね。