『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(テアトル新宿)
首を長くして劇場公開を楽しみにしていた期待しまくりの映画、やっと観られるときがきた。豪華な俳優と中原昌也とのコラボレーション、面子をみただけで普通じゃない何かを感じずにはいられなかった。
物語の舞台は感染すると自殺に追い込まれる「レミング病」という奇病に侵された2015年の日本。ミズイ(浅野忠信)とアスハラ(中原昌也)のノイズユニットの繰り出す「音」が病気の治療を助けるという噂を聞きつけたミヤギ(筒井康隆)が、感染者である孫のハナ(宮崎あおい)を引き連れて彼らのもとを訪れた……。
青山真治の「音」に対する強い愛着とこだわりをいかんなくフィルムに納めた他ではみられない実験性の高い作品であった。まずオープニングのシーンから非常に素晴らしく、強く印象に残る場面だ。集音マイクを持って砂丘で風の「音」を拾い歩く浅野・中原、都会の雑踏を離れ大自然の中で創作活動に意欲を出すミュージシャンの姿がリアルに表現されている。それから扇風機、ホース、貝殻、物干し、トマト、ロープ、、、日常の何気ないモノから「音」のネタをかき集める様子もとても面白い。それ以外でも特に中原昌也は(セリフは少ないが)とてもオイシイ役を演じていて、ライブハウスで轟音を鳴らし、腹の奥底から咆哮する様は、「音」に興味を持ってこの作品を見た者であれば誰でも感銘を受けずにいられなかったであろうと思えるほどカッコよかった。イケメン・某島雅彦氏なんか目じゃないぜ。
約10分間にも及ぶクライマックスの浅野忠信の演奏シーンも当然この映画のミドコロだ。青空の下、大草原の中でエモーショナルにギターをかき鳴らす気持ち良さが観る者にまでダイレクトに伝わってくる。治癒の可能性を願って「音」に身を委ねる宮崎あおいの演技もさすが期待の若手。目隠しをされて表情は見えなくても、かすかな希望を持つ気持ちと病を治そうとする強い意志が現れていた。
ロケ地である釧路の自然描写がとてつもなく綺麗で、穏やかな日差し、青い空、悠然とした山々、あまり映画では取り上げられることの少ない日本の地域にもこんな素晴らしいところがあったとは北海道出身者の自分でも驚いたものだ。コテージの雰囲気もいい感じに撮れていた。岡田茉莉子の作るシチューは超ウマソー!
「音」のチカラを映像で表現するという青山真治監督の試み、これは大成功だろう。ノイズミュージックが聴きたくなってサントラCDまで買ってしまったぞ。
公式サイト:http://www.elieli.jp/top.htm
- アーティスト: サントラ,長嶌寛幸,中原昌也,浅野忠信
- 出版社/メーカー: Pヴァインレコード
- 発売日: 2006/01/20
- メディア: CD
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