岡崎祥久 『首鳴り姫』

首鳴り姫

首鳴り姫

久しぶりに岡崎祥久を読んでみた。やっぱり最高!マジ最高な小説だ。主人公・片貝クンとその恋人フキコちゃんの甘酸っぱく切ない朴訥とした夜間キャンパスライフ(早稲田大学第二文学部と断定して差し支えないだろう)を相変わらずの岡崎節全開で書き上げた力作だ。‘岡崎らしさ’という面では集大成といえる内容となっている。
片貝クンは二浪の末やっと大学の夜間学部に入学したのにサークルにも入らずバーサマと同居して我が道を行く人生を送る。入学式で一目ぼれしたフキコちゃんと仲良くなる。付き合うことになっちゃう。女になんかは相手にもされずクソったれの人生を歩むだろうと想像していたので、この展開は意外だった。何の予告もない突然の告白シーンは極めて上手く書けている。読んでいてドキドキした。
働くのは嫌いだし、大学生協で『羊をめぐる冒険』は買っちゃうし、おっぱい揉みまくりだし、フニャチンだし、過去と現在と未来について色々考えちゃうし、バーサマのキャラもナイス!詳しい知識は持ち合わせていないのだが詞(古典なのかな?)の引用も粋でヨイ。
村上春樹で言うところの図書館が、岡崎作品においてはラブホテルであって、村上春樹においての井戸は、岡崎のでは地下鉄になるのかな。入り口と出口?
今くらいの不思議な立ち位置でマイペースな執筆活動を今後も続けてもらいたい。この作品は彼の衝撃のデビュー作『秒速10センチの越冬』(群像新人文学賞受賞作)と併せて読むとより楽しめるだろう。