村上春樹「若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)」

若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)

若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)

読書の秋。疲れてて本も読めない状況からやっと脱却できたおかげで久しぶりに春樹を読んでみた。
この本は安岡章太郎小島信夫などいわゆる『第三の新人』世代の作家たちを取り上げた春樹自己流の読書指南本である。彼が米国の諸大学で教鞭を採った経験をもとに執筆されたものだ。なので文体も会話調で本当に大学の先生が学生に語りかけるように描かれている。
読んでいく過程でどのような点に着目し、その着眼点から作家自身や物語そのものを深く掘り下げていく方法が面白いと思った。私のようにここで取り上げられている素材とはいままで全く無縁の者でも十分に楽しめるようにできていたので嬉しい。前書きで述べられている村上春樹の中での短編小説に対する考え方も興味深かった。

この本、他人の作品をモチーフにしたフリをして、実は春樹ワールドの楽しみ方や読み方のヒントをを自らほのめかしているように思えてならない。