町田康グループ vs KENZI&THE TRIPS〜SHINJUKU LOFT 6TH ANNIVERSARY


18時半頃に入場した。元祖ビートパンク!、今夜の一番手・ケントリのライブの真っ最中だった。釣り上がった目、スマートな体、バンドブーム期にロック雑誌で見ていたまんまのKENZIだ。シンプルでわかりやすい演奏と親しみやすい歌詞のおかげで音源もロクに聴いていない初見の私でも十分楽しめた。KENZIの煽りが古き良きライブハウスの香りをフロアに充満させた。
演奏面においても歌唱面においてもそこいら辺のビートパンクバンドにありがちな幼稚さは全く無く、長年シーンを支えてきたベテランらしい安定した堂々たる快演であった。
最近の曲と往年の名曲を織り交ぜ1時間強のパフォーマンス。シメの‘BRAVO JOHNNYは今夜もHAPPY’で会場は最高にヒートアップ、このバンドのよさが凝縮されている名曲だ。

見ていて客側からの多大なる愛情が感じられた。今もなおここまで人気があるバンドだったとは、想定の範囲外だった。

さて、続いてお目当ての町田康グループの登場。先日の恵比寿でのライブを見て自分の中ですっかりお気に入りに登録されてしまった。場内もやはり町田目当ての客が多いようだ。こないだよりも女性ファンの黄色い声が目立つ。若い客も多い。
もうおなじみ1曲目の‘夫婦茶碗’からみんなもう彼らの虜だ。誰にも真似できない細かい表現力を持っている。町田康という男は声の出し方や歌い回し方で日本語独特の語感の良さをさらに際立たせることができる類まれなシンガーである。言葉というものに対する執着心が物凄い。バックの演奏陣のレベルもかなり高く、コーラスをとりながら味のあるドラミングを披露してくれたロジャー高橋や外見とは裏腹に攻撃的なBASSのSIMA-CHANGの勇姿も印象深い。
前回のライブの印象では下を向いて寡黙な町田のイメージを抱いたが、今夜の町田はにこやかで客の目を見ながら歌って踊っていた。微妙にハスキーな声を聞けるだけでもう満足。魅力的だ。

セットリストは前回とほぼ同じ。聴きたかった曲は‘うどんの中の世界’。うどんの中に椎茸だの鶏肉だの陰茎だのアメリカだの政治家だのこの世の万物をことごとく突っ込んでしまうファンキーな曲である。期待を裏切ることなくしっかり演ってもらえて大満足。この日初めて聴いた‘苦しいことから私は逃げた’もかなり気に入った。彼の小説と同じようにダメ人間の悲哀をテーマにした胸に染み入る曲だ。

MCはほとんどなしで淡々とライブは進む。神経を集中させて聴いていたのであっという間に終わった気がした。アンコール後の「気をつけて帰って下さい」という町田康の言葉がとても優しく心に響いた。6月にさいたま新都心でワンマンライブがあるのでぜひまた行きたい。
前回買い逃したライブCDを購入。ここ数日のヘヴィーローテーションになること間違いなしだな。

町田康グループ■


1、夫婦茶碗 2、すっぽん○、3、昔の話ばっかりしてる奴、4、新曲 
5、頭が腐る 6、うどんの中の世界 7、春子の方がそら悪い 8、荒野の曲
9、新曲、10、恋する君はチャーミング 11、淀川のX団 12、野菜食ってゴーゴー
13、フェイドアウト 14、気い狂て
encore1、苦しいことから私は逃げた