中原昌也「あらゆる場所に花束が…」読了


あらゆる場所に花束が…

あらゆる場所に花束が…


殺せ殺せ殺せ!殺意・憎悪・怒りの総合商社・中原昌也の血まみれの三島由紀夫賞受賞作。
生身の体から吹き出たばかりの新鮮な生臭い血の香りに、なぜか惹かれてしまう。それはやはり私が普段生活している日常とこの小説の世界とがどこか微妙にリンクしているという理由により、好むと好まざるとに拘わらず感情移入しているからであろう。日常に潜む殺意が克明に表現されている。大阪の宅間守の事件、佐世保の小6のカッター事件、奈良の小林薫の事件etc…、人が人を殺す・殺されるということはもう新聞やテレビの中の話だけではなくなってしまった。

文章的に幼稚な部分は多々あるし同じような暴力シーンの寄せ集め的コラージュに正直後半は飽きてきた。だが中原昌也は自分の中でますます無視できない存在になった。彼は既成の文学までも血祭りにしとめる気なのか。。。

目まぐるしい意味不明な場面展開、救いの余地の無い絶望的な世界感、あいもかわらず残酷この上ない不快な描写、これがまさに純文学だと公言はしないが、この不純極まりない作品を自分の中でこっそりと純文学のあえてど真ん中にカテゴライズしておこう。


ここまでの糞作品に賞を与えちゃった残酷なヤツラはこちら
(第十四回三島由紀夫賞決定・2001年5月17日)
http://www.shinchosha.co.jp/mishimasho/014.html


否定的なのにしっかりとポイントを捉えている、郄樹委員の選評がいいぞ!