上原ひろみ 『Beyond Standard』


ビヨンド・スタンダード(初回限定盤)(DVD付)

ビヨンド・スタンダード(初回限定盤)(DVD付)

5月にリリースされた上原ひろみの最新アルバム。ジャンル問わず、新旧問わずのスタンダード曲(セルフカヴァー1曲を含む)を彼女流の大胆なアレンジを加えたカバーアルバムだ。前作に引き続き、TONY GREY、MARTIN VALIHORA、DAVID FIUCZYNSKIの3名を従え、‘HIROMI'S SONICBLOOM’というバンド名で録音された作品である。


正統的JAZZのスタンダードである‘朝日のようにさわやかに’や‘My Favorite Things’から、坂本九の‘上を向いて歩こう’、そしてジミヘンやジェフ・べックの曲まで、それぞれを単独で見るとなんの脈絡のない9曲だが、上原ひろみのアルバムを構成する曲として一列に並べられると不思議な統一感があるものだ。人気・実力ともに充分、通算5枚目ともなれば30才前にして既に王者の風格さえ漂う。パワフルで卓越した鍵盤さばきや華々しいインタープレイ等の充実度は、前作を超えてまばゆいほどに輝いている。ピアノソロにしても、バンドアレンジにしても、曲構成や聴かせどころの作り方にしても、どこをとっても上原ひろみ100%!!スピーカーから飛び出してくる気迫と熱意には頭が下がる思いでいっぱいだ。



が、濃すぎてクドくて一枚聴くのにやたら疲れるのと、ファンキーなフレーズでのいかにもJ-POP的でベタベタなタイム感には少々ゲンナリ。。。いかにも日本人が弾いていますというようなここまでのハギレの悪さは、狙いがあってワザとやっているのであって欲しい(!?)と願ってしまうほどに格好が悪い。上原の技術と気合でさえも肌の色は超えられないのか!?ギターが加わっての新アレンジが施された‘XYG’は作為性が目立ちすぎて素直に楽しめなかった。まあアラばかり探してもどうにもならないのは解っているのだが、残念だ。

それでも新境地を感じさせる煌びやかなリフが印象深い‘My Favorite Things’や、曲の中で弾き方や雰囲気がコロコロと変化していく‘I've Got RHythm’は本当に素晴らしい。正直彼女のフレージングやアドリブには私はやや食傷気味なのであるが、あとはライブでどうなっているかだ。来月に迫った東京JAZZ2008でのパフォーマンスに期待しよう。


86点。




Beyond Standard

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