岡田利規 小説『楽観的な方のケース』


初めて読みます、初めて触れます、岡田利規の小説です。わずか数ページのすっきりとした短編小説だ。アパートに住む若いカップルが、近所にある美味しいパン屋を発見する。美味しいパンのせいで何か大きな事件が起こったりということはない。カップルは喧嘩したり仲直りして普通に生きている。が、これは「楽観的な方のケース」とのことだ。
じゃあ楽観的じゃない方はどーなのよ??、と考えると、ちょっと恐ろしかったりグロく感じられたりもする。ですます調の腰の低い文体もどことなく意味ありげで、深読みしようと思えばいくらでもできる。読み手の解釈しだいでいかようにも受け取られる、思い切ってアナザーサイドを想像することを読者に要求するような、そんな小説だ。
文章は分かりやすくシンプル、描写はオシャレで清潔感があり、独特の瑞々しさがある。たとえありふれた情景でもヴィヴィッドで、素敵。もっと長いのを読んでみたくなった。