村上春樹 『辺境・近境』


辺境・近境 (新潮文庫)

辺境・近境 (新潮文庫)


ゴールデンウィーク中の旅路で村上春樹旅行記を読んだ。数作ある彼の旅行記の中では新しめの部類に入る作品かな。香川讃岐地区、ノモンハンアメリカ大陸、そして神戸と、春樹の小説では大きな大きな意味を持つ地域を、写真家の松村氏とともに歩んだ探検のような、しかし必然的に平凡な日常と地続きでアンチ・クライマックスな歩みを、やや湿ったいかにもな文体で書き綴っている。


なかでも一番の読みどころは香川でのうどん食べ歩きの章だ。読む者は誰でもコシのあるツルツルっとしたうどんを啜りたくなること請合い!食べ物とSEXシーンを書かせると村上春樹の右に出る作家はいないよなあ。


観光目的な旅とは趣向を異にした旅というのはこういう職種の人くらいしかできないだろうね。気持ちが陰鬱になるシチュエーションも多いんだけど、そういうのも含めてちょっとうらやましい。