『HOWLING』(CLUB GOODMAN)

出演:Ces Chiens(早川義夫佐久間正英)/ 割礼/ナスノミツル灰野敬二石橋英子


早いもので12月になってしまった。こないだ正月だと思ったら、何もなさずまま残り一月となってしまった。秋葉原は今日も多くの買い物客で大混雑。再開発以降様変わりして良かったのか悪かったのかはまだなんとも言えないが、街に人が多く繰り出しているという現実は喜ばしいことではないか。タワレコでは萌え系コスプレアイドルの握手会が催されていた。客層、すげーー。
早川義夫佐久間正英、割礼、ナスノミツル灰野敬二etc、今日のライブはすごく豪華なラインナップ!わりと年配め(早川のファンと思われる)の客と、なかなかマニアックそうな若い客が入り混じっていた。でももっと人が入ってるのかと思ったぞ。ムーディーな独特のゆるいグルーヴで聴かせるベテランバンド・割礼(思っていたよりもずーっっと普通の人たちだった)の次に「ナスノミツル灰野敬二石橋英子」がでてきた。


ノイズ界の重鎮・灰野敬二の姿、ライブで見るのは初めてだ。背中まである金髪で、大きなグラサンをかけてSGタイプのギターを構えている。下手に立つのは説明不要、敏腕BASSIST・ナスノミツル石橋英子は今日はキーボードではなくドラムだ。
ノイズというよりはインプロヴィゼーションと言ったほうが近いのではなかろうか。ノイジーではあるけれども執拗な耳障り感はない、想像していたよりもはるかに音楽的だった。3者3様の感性とテクニックをそのままに出したような音楽である。構成やキメ等(インプロの応酬だからそんなのないに等しいけど)についてある程度の打ち合わせなんかをしているのだろうか?それともまったくのぶっつけ本番勝負なのか?聴いてるだけではわからない。この人たちは何を考えて演奏しておられるのだろうか。序盤は暗く静かに始まって互いに展開を探り合うような様子で、乗ってくると不思議にそれぞれが噛み合うような面白さがでてきた。灰野は特別難しいことをやっているわけではないが理由なんかいらないくらいにカッコイイ。大きな音を出すことのある種動物的な気持ちよさが伝わってきた。ナスノミツルのプレイを聴くのは今年6月の下北沢以来の二度目になるが今日も強いピッキングで存在感の濃い音を出していた。フレージングよりも音色や迫力の印象が残るプレイだった。そしてこんなスーパー大御所と一緒に演っちゃって大丈夫?と余計な心配な気もしたくなっちゃう石橋英子ちゃんだったが、これがこれが物怖じせず堂々たる壮絶なドラミングを披露してくれた。ってかPANICSMILEのときよりもずーーっとウマいじゃん!!ライブ中盤で盛り上がってくる頃には神が宿ったかのような超スーパープレイを聴かせてくれたのである。まったくのフリーフォーム、決まったテンポもビートもないという迷宮の中で、自らバンドを指揮するかのごとく、物静かなルックスからは想像できないアグレッシヴな精神を放っていた。ときおりオカリナやらなにやら奇妙な小楽器も駆使して表現に幅を広げていたぞ。
そんな3者が思いのままに絡み合い、あっ、ほどけたと思ったらまた絡み合い、爽快なカオスを作り出していたのだ。誰にでもできることではない。センスと勘が頼りのこの音楽、ここまでの緊張感と圧巻ぶりを表現できちゃうというのは、やっぱり才能なんだなと思う。もちろんフロアを埋めた観客も大満足のようで、そのヤラれっぷりをそれぞれの言葉で口にしていた。これはアタリなライブでしたぜ。石橋のドラムを聴くためにもっとパニスマのライブに行かなきゃならん!!