吉田修一 『女たちは二度遊ぶ』


女たちは二度遊ぶ

女たちは二度遊ぶ


‘女’を題材にした吉田修一の短編集。女という普通に考えても難しい生き物を、吉田らしく穏やかなタッチと細やかな視点を駆使して緻密に描かれている。登場するのはみな普通に生きていながらも、なにかしらを抱えた‘女’である。一文一文が短く異様にも思えるほど簡潔ではあるが、独特の捉え方と視座のおかげで非常に生々しい小説に仕上がっている。血の通った人間の生きる様は時に目を背けたくなるほどグロテスクなものだ。普通に生きていた女がある日突然に様変わったり、なんともいえない毒々しい内面を見せ始めたり、姿を消したり、ありえなそうだけどリアルな女っていうのはこういうものかもしれないと微妙に共感してしまったりする。
場面が目に浮かぶような映像的な描写や、静謐で嫌味臭さのない情景描写も他の吉田作品に引けを取らないほど巧く書かれている。展開グイグイで読み込ませる長編よりもこういう限られた枚数で読むほうが彼らしさを見つけやすいのでは?