KEITH JARRETT/GARY PEACOCK/JACK DeJOHNETTE JAPAN TOUR 2007(東京厚生年金会館)


2005年にソロでのライブを見て以来のキース・ジャレット、60代になっても精力的に音楽活動を続けてこうやって来日してくれるのは非常にありがたい。今回のツアーはゲイリー・ピーコック(B)とジャック・デジョネット(Dr)を従えてというこれ以上ない現役最強トリオなので複数回見るべきだったのかもしれないが最終日の新宿のみに参戦した。12列目中央部、ほどよく見やすい席だった。


呼吸をするのも躊躇われるほどの静謐な空気感、キースのライブはこれに尽きる。スタンダード曲を中心にしたひっそりとした演奏にじっくりと耳を傾けるのだ。お馴染みなの曲たちのテーマが演奏され、曲が進むにつれて高度な演奏技術と知性溢れるアイディアに満ちた独特のジャレット・ワールドへ邁進していく。聴く側にはかなりの集中力が必要とされる。一音も聴き漏らしてはならないのだ。キースは鍵盤を撫でるような軽々とした手つきで次から次へと知的で素晴らしいフレーズを連発していった。特に前半の‘Someday My Prince Will Come’と‘Straight, No chaser’での楽曲(素材)の良さを生かした胸に染みるプレイにはここまでのミュージシャンの演奏を生で聴けることの幸せがたっぷりと胸に迫ってきた。
休憩を挟んでからの後半も同様に唯一無二の素晴らしいプレイを聴かせてくれた。キースのピアノがすごかったのはもちろんのこと、ツボを得た粋なジャックのドラミングは雰囲気を盛り立てるのに必要不可欠な役者であったし、ゲイリーのベースプレイにはベテランらしからぬ守りに入らない斬新さが感じられ、今になっても演奏し続ける所以の答えを他の何物でもない生の演奏をもって明かしてくれているようにも思えた。今夜のハイライトは本編を締めくくる‘My Funny Valentine’だ。あのイントロで歓声が沸きあがる。。。大海原へ流れ出る細い川のように流暢で軽快なテーマ、魂の篭った白熱するインプロヴィゼイション、長々とした煌くようなエンディングに会場いた者はみな息を止めて聴き入っていた。。。アンコールにもしっかり出てきてくれてしっかり2曲を演奏。
こういう神がかりなのを体感できることは人生においてそう何度もあることではない。なにがどうすごいのかを文章で説明するのはとても難しいのだが、とにかく物凄いモノをじっくり聴かせてもらえた感は計り知れないほど胸に残っている。また来日してくれることを切に願う。

KEITH JARRETT/GARY PEACOCK/JACK DeJOHNETTE

〜1st Set〜
1) Bye Bye Blackbird 、2) Smoke Gets in Your Eyes、3) Conception、4) Django
5) Someday My Prince Will Come、6) Straight, No chaser

〜2nd Set〜
1) You Go To My Head、2) You Belong To Me、3) One for Majid、
4) My Funny Valentine 〜 Improvisation

〜Encore〜
1) Poinciana、2) I Thought About You