五反田団第34回公演『いやむしろ忘れて草』(再演)(こまばアゴラ劇場)

作・演出:前田司郎
出演:大竹直(青年団)、後藤飛鳥志賀廣太郎(青年団)、端田新菜(青年団)、兵藤公美(青年団)
    望月志津子、山本由佳(むっちりみえっぱり)、黒田大輔(THESAMPOOHAT)


劇作家・演出家、小説家として活躍する前田司郎が主宰をつとめる五反田団の第34回公演。せっかく都心の便利な街に住むことができたのから、休日はその利点を思いっきり活用しようと思い、観ることに決めたのだ。井の頭線の東大駒場前という駅に生まれて初めて降りた。喧騒きわまりない渋谷からわずか2駅なのに、一軒家の密集するとても閑静な住宅街であった。地図を見ながら想像以上にこじんまりとしたこまばアゴラ劇場を発見し、入場した。楽日、ソワレ(追加公演だ)、整理番号28番、後方中央めのパイプ椅子席を確保した。狭々として暑苦しかったが1時間20分くらいなら耐えられそうだと思った。客は男性が多い。今まで観た演劇は女性客が過半数を占めるものが大半だったので、どうしてこの作品はこうなのだろうか、と思いながら開演を待った。。。

先日、五反田のボーリングセンターがなくなりました。
そこは子供の頃家族でたまに行った思い出の場所だったりします。
人は変わるのを恐れるくせに進歩したり成長したがったりしますが、
結局、行き着く先は死んじゃうことです。全くよくわからない。
死ぬことをわすれていないと生きていけない。
この話の主人公は常に自分が死ぬ存在であることを
自覚しながら生きています。不幸なのか、なんなのか。
お話は八百屋の四姉妹の物語です。
母は大分昔に蒸発した。三女はずっと病気。
別に強くも正しくもない、そこら辺にいるような四人は
それなりに不幸にそれなりに幸福に生きていく。
それだけの物語です。     (オフィシャルサイトより)

私が最後にボーリングをしたのはもう6〜7年も前のことだ。札幌市白石区のその古臭いボーリング場はまだ存在しているのだろうか。




地方都市で地味な生活をおくる四姉妹(三女は闘病生活を送る)と八百屋を営む父親とのひっそりとした心のやりとりを描いた物語である。日常のなにげない会話や各人の生活模様をとおして心情の起伏が細やかに描かれている。上記のとおりそこら辺にあるような家庭で、それなりに不幸でそれなりに幸福だ。死、生、恋、友情、家族愛、将来のこと、、、誰でも毎日当たり前のように思いを巡らすような事柄に対する感情が、演技は上手いとは言えないが、うまく伝わってきた。泣けるとか笑えるとかそういうものではないのだ。この人はこんな場面でこういう風に考えてるのだなと、ただそれだけがわかった。ただそれだけ、、、でも、ふしぎにも観終わって心に大きく何かが残ったように感じた。
三女が病床で泣きじゃくるシーンで結末を迎えたが、その後彼女はどうなったのだろうか。。。