阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』


インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)

インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)


J文学・シブヤ系文学というジャンル(?)の知名度を一気に上昇させた90年代文学の最重要作品。読むのは4回目になるかな?何度読んでも本当に素晴らしい。よく出来ている。硬くて力強い文体でゴツゴツ攻めてくれる。この本を読むとシブヤへ行って喧嘩したくなるぜ〜!

阿部和重の構成力や発想の豊かさ、リサーチの深さに出た当時は驚いたものだが今になって改めて読んでみると意外に簡潔であっさりしたもの感じられた。情報量は豊富でもスラスラ読めるように書かれているのだ。

ぼくらはいわば一つの緻密な物語を書き上げねばならなかった。それは、あらかじめ案出された謀略計画や戦闘作戦などを、マサキが提示した条件に基づいてシュミレーションをおこない、レポートとしてまとめる作業である。形式は自由で、より精密なものが求められた。ぼくらは出きる限り詳細に事態の推移を捕捉し、それを簡潔に物語ってみせなくてはならなかった。 (本文56頁より)


この書きくだりには何度も震えさせられる。まさにこの文章のとおりに書き上げられた名作なのだ!M。


うー、俺も訓練をしなければ!