岡崎祥久『日竹カンパニ』(すばる 2006年 11月号)

すばる 2006年 11月号 [雑誌]

すばる 2006年 11月号 [雑誌]


デビュー作『秒速10センチの越冬』の続編とも読めるような興味深い作品だ。岡崎祥久が久々に労働をテーマにした小説を書いた。働きたくはないが生活していくために就職を決意したマイナー作家の姿は岡崎本人とぴったり重なる。7種類の材料を調合して作られたドリンク、脱力したアパートの管理人、(鉛筆に被せるサヤを吸うの!?)禁煙のためのオリジナルな論理、彼らしい浮遊感を持ったわかるようなわからないようなネタが立て続けに登場し、それらのフラフラな雰囲気が終始物語を支配する。サラリーマン生活を始めた兼業作家の生き様を通して夢も希望も持ち得ない現代社会を皮肉っぽく映し出す。難解な作品だが底辺社会を生きていくうえでもしかしたら岡崎祥久の存在は今後ますます心強くなっていくかもしれない。