オリガト・プラスティコvo.3『漂う電球』(本多劇場)

作:ウディ・アレン
訳:鈴木小百合
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:広岡由里子岡田義徳高橋一生、伊藤正之、渡辺いっけい町田マリー

ナイロン100℃の主宰・ケラリーノ・サンドロヴィッチアメリカの映画監督・ウディ・アレンの戯曲の演出を手がけるというちょっと興味深い芝居を観に行ってみた。しかもテレビでおなじみの渡辺いっけい毛皮族の看板女優・町田マリーも出演するというのだから見逃せない(たぶん)。金曜日の夜、豪雨の中スーツをビショビショにさせてやっとの思いで本多劇場に辿り着いた。下北遠いし道狭すぎだよ。早く再開発して歩きやすい街になっておくれ。。。


物語の舞台は第二次世界大戦終了後の1945年、アメリカ・ブルックリン。手品師を志し学校をサボってばかりの長男(岡田)とちょっとトボけた感じのする次男(高橋)、感情的な性格の母親(広岡)と碌な仕事もせずに愛人(町田)を作って遊んでいる父親(伊藤)からなるありがちな4人家族のお話だ。そんな様子なので当然の事ながら夫婦の仲はあまり良くない。ひょんなことから芸能界のエージェント(渡辺)が一家を訪れることになり、長男はそこで手品を披露し、もし気に入られれば世へ羽ばたくチャンスとなるのだが、、、。


息子への愛情とユーモアに溢れたのべつ幕無し喋り捲る広岡がまず好印象。不器用ではあるが上を向いて生きる庶民の姿が上手く表されていた。そんな母親とは対照的に内気な息子たちのテンションの低さも見所で、こういう人生の目標を見出せないような子供は逆に現在に通ずるものがあった。愛人と駆落ちを企図する父親も同様に不器用で賭け事に人生を託そうとする様は哀れであったが、随所に人の良さや温厚さが溢れていたために憎めない男に感じられた。後半から登場する芸能エージェント、実際はかなり胡散臭く期待とは大違いの小物であったのだが、この男と母親が一気に意気投合し仲良くなっちゃうのがこの作品のクライマックス。二人っきりの穏やかな会話がひたすら続くのでやや退屈な気もしたが心が温まったのでこれはこれでOKだ。
奇抜な演出や大爆笑のギャグなどほとんどないKERAらしからぬ?オーソドックスな演劇で、なさそうでありそうな心温まるストーリーと貧しい環境で地味な生活を送る家族たちの交流をそのまま楽しむひっそりとした芝居であった。ヘタに笑わせたり奇抜な演出を入れたりしなくても見応えのある劇になっていて安心できた。KERAは意外に懐の深い演出家だ。こういう経験をぜひナイロンで生かして欲しい。




お目当ての町田嬢、出番は少なかったがらしさはそれなりに発揮できていた、、かな?