劇団、本谷有希子・第9回公演『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(青山円形劇場)〜NHK・BS2「ミッドナイトステージ館」〜


作・演出:本谷有希子
出演:伊達暁阿佐ヶ谷スパイダース)/森尾舞俳優座)/吉本菜穂子菅原永二猫のホテル
    鳥海愛子(元劇団員)/本谷有希子

先日NHK・BS2で放送されたのを今日になってやっとこ見た。序盤の30分程度はいきなり本谷有希子のインタビューから。これは貴重!演劇の道を志すに至ったいきさつから制作・演出にあたって考えていることなど自らの言葉で赤裸々に語ってくれていた。以前青山ブックセンターでのトークショウの時も思ったのだが、かなり細かいこと(劇場内のエアコンの設定まで!)を隅から隅まで頭に描きながら戦略的に創作しているのだ。確信犯・本谷、さすが。続いて2004年11月に公演され、後々小説にもなった彼女の代表作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が放映された。



能力の無さに気づかず傲慢にも東京で女優を志す長女、高圧的で暴力的だがどこか心の弱い長男、生まれながらに底辺の人生を歩まざるを得ない運命を背負った長男の嫁、病弱で臆病なはずなのになぜか攻撃的な性格を併せ持った漫画家を志す次女、、、心に部分的な破綻を抱えた兄妹たちが両親の葬儀で再開し、ドラマが始まる。。。私は小説を先に読んでいてストーリーが頭の中に入っていたせいか、さくさく気楽に観られた。
さすが劇団、本谷有希子の代表作、ちょっと普通じゃない人々の交流がさらに人格の破綻を呼び寄せるお得意パターンだ。各人のどうしようもない言動が他者を徐々に貶めていく。。。自意識過剰極まりない長女の痛々しさに表現したいことが凝縮されているようだ。そんな長女とは逆の全く何も考えていない兄嫁との対比が面白い。また、笑いと異常さとエロさの適度なバランスで観やすい劇になるように工夫されている。2時間に色々詰め込んでいるように見えてもストーリーはスッキリしているしシーンごとの繋ぎがシンプルなせいか分かりやすくて疲れない。近親相姦、イタズラ電話、盗撮、藁人形etc、ブラックな小ネタも有効に使われている。最後にちょこっとだけ登場する女優としても本谷の姿もイイ!この作品を観れば劇団、本谷有希子とはどのような方向性の演劇をするのかが端的に分かるだろう。DVDにもなっているのでオススメだ。やっぱり小説よりも演劇で観たほうが面白いよ!


腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ




あんた、なんのために生きてんの?