IRON MAIDEN『Matter of Life & Death (Snys)』


Matter of Life & Death (W/Dvd) (Dlx)

Matter of Life & Death (W/Dvd) (Dlx)



イラクだろうか、それともレバノンなのだろうか、、、戦地で指揮を執る‘EDDIE’。素晴らしくインパクトの強いアートワークを見ただけで否が応でも期待の膨らむIRON MAIDENのニューアルバム(邦題:ア・マター・オブ・ライフ・アンド・デス〜戦記)が、ついにリリースされた。近年の彼らの作品と比べて特に大きく変わった部分はなく、BRUCE DICKINSON(Vo)とADRIAN SMITH(Gt)が再加入して6人編成になった『Brave New World』以降の大作主義路線がここにきてついに完成型となった。ブリティッシュ・ロックを開拓してきた先人ヘの大いなる敬意を基盤に、四半世紀に渡ってシーンの第一線に君臨し続けたことにより培われた熟練した演奏技術と、溢れ出て有り余るほどのアイディアから生み出された類稀なるサウンドが72分間にびっしりと凝縮されている。
抑揚に富み独特の湿り気を帯びた歌メロ、印象的なリフレイン、先の予想のできないドラマチックで複雑な展開、狂おしく絡み合う3本のギターフレーズ、安定性とスリリングさを兼ね備えたリズムセクション、、、バンドが保持する数多の武器が必要に応じて器用に駆使され、それぞれの楽曲はバンドの輝かしい経歴に恥じないハイクオリティなものへ作り上げられている。長尺な曲が多いのが今作の特徴のひとつなのだが、あくまで曲の魅力を出すのに必要な展開・アレンジを施した結果こうなったといった程度の長さであって、取っ付き難いというよりもむしろ今までIRON MAIDENが好きだった者にとってはこれくらいじゃないと物足りないと感じられるだろう。プロダクションや音質面においても全く非の打ちどころがない。
ヘヴィメタル史上最強のシンガー・BRUCE DICKINSONは自身の持つさらなる力をあらわす術を見出し、バンドのブレイン・英国紳士STIVE HARRIS(Ba)は冷静に作品全体を俯瞰し複雑なマテリアルを巧く纏めあげた。ヘヴィメタルという枠だけにおさまらず、伝統に倣った上質のブリティッシュ・ロックといえる知性に溢れた秀作である。なかでも‘THESE COLOURS DON'T RUN’の完璧さには恐れ入る。来月に迫った来日公演が待ち遠しくてたまらない。
94点




アイアン・メイデン来日公演情報(creativeman):http://www.creativeman.co.jp/060106pages/maiden.html