あわれ彼女は娼婦(シアターコクーン)


原作:ジョン・フォード
翻訳:小田島雄志
演出:蜷川幸雄
出演:三上博史深津絵里谷原章介石田太郎立石凉子、梅沢昌代、高橋洋


世界のニナガワ初体験!公演初日、当然満席。NHKも取材に来ていた。一番後ろの席だったけれどオペラグラスも買ったし、この会場なら無問題だ。舞台は中世のイタリア・パルマ地方、名家の子息・ジョヴァンニ(三上博史)が実の妹・アナベラ(深津絵里)と禁断の恋に墜ち、真実の愛を確かめ合った末に悲劇の子を身篭り、それ故それぞれが破滅の道を歩んでいくというストーリーだ。
蜷川の演出はオーソドックスな新劇的テイストで、大きく羽目を外したり奇を衒ったりすることは少ないが、どこか観る者を頷かせるようなマジックが感じられた。理由は分からないのだが自分の中で腑に落ちる、そうだ、なるほど、と納得してしまうことが劇中何度もあった。
主演の三上と深津。両方とも舞台で見るのは初めてだったのだが、三上は想像通りテレビで見ていたまんまの熱演タイプであった。熱く、男らしく、ややオーバーアクションで濃い目な演技なのでこの役には十分合っていたと思う。ただ、欲を言えば予想通り過ぎたのでどこか意外な部分を見たかった気もした。逆にヒロインの深津はテレビでのイメージと大違いで驚嘆(笑)。アニメ声優のような、いかにもお姫様的な甲高い声でキラキラと喋る。それに加えて、ひとりで語る場面と会話の場面とでは微妙に口調を変えていて、そうすることによってうまい具合に心情の推移が表現されていたように思えた。さすが実力者である。
昨今のプチ演劇ブームの中では逆に珍しい部類に入るのかもしれない、誰でも想像のつくようなありふれたストーリーでもなかなか興味深く楽しめる作品であった。無常で残忍なラストシーンの三上はよかったぞ。笑いや奇抜な演出の少ないいわゆる「普通の演劇」でここまでじっくり見入ったのはもしかしたら初めてかもしれない。観劇後も思い出しては何度も納得。納得。



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あわれ彼女は娼婦 心破れて (エリザベス朝演劇集)

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